転生姫は国の外に嫁ぎたい〜だって花の国は花粉症には厳しすぎるのよ〜【WEB版】

「フィエラシーラ姫」
「は!? へ!? は!? コキア!?」
「できましたよ」
「あ、ありがとう。早かったですね」
「いえ、もう一時間過ぎております」
「え?」
 
 懐中時計を見せられると、あれぇ……? 本当だ、一時間経ってる……?
 
『もうええか?』
「あ」
『はあーーー、疲れた~~~』
「あーーー……」
 
 フラーシュ様ァ……! 行かないでください~! もっともふもふさせてください~!
 くうう、一時間が一瞬過ぎる!
 
「それは?」
「え? あっ……!?」
 
 ニグム様がコキアの持ってきたペンダントを覗き込む。
 あれ? 待ってください? 私、フラーシュ様をもふもふしている間……隣にずっとニグム様がいたということ、だよね?
 あの痴態をずっと真横で見られていた、ということ……ですよね!?
 
「ニグム様、あの、さっきの私……」
「ああ、可愛かった」
「見なかったことにしてくださいませ~~~~!」
「いや、幸せそうで可愛かった。いつか俺でもあんな幸せそうな顔をしてもらおうと、気合が入った」
「そっっっ……!?」
 
 そういうのはズルいと思います。
 ぐうううう、いつもと髪型が違うだけなのに、かっこよくてしんどい!
 
「それで、そのペンダントは?」
「あ、は、はい。新しく作った祝石(ルーナ)です。体に薄い膜のような結界を張って、花粉を寄せつけないようにできないかと……」
『どれどれ~?』
 
 フラーシュ様がニグム様の肩から顔を覗かせて、ペンダントに加工した祝石(ルーナ)を覗き込む。
 ふむふむ、と見つめると顔を私の方に向ける。
 つぶらな瞳可愛い。
 
「いかがですか?」
『おう、ちゃんと付与効果成功しているぜ! ただ、ランク3だと今日一日しかもたなさそうだな』
「一日だけですか!?」
 
 いくら消耗品とはいえ、たった一日しかもたないなんて……。
 じゃあ、噴水に同じ効果付与した水の幻魔石を沈めまくるしかない、のね。
 幻魔石の大きさはランクによって違うけれど、同じランク3でも微妙に大きさが違う。
 コキアペンダント加工も毎朝してもらうのも申し訳ないし、毎日沈めていた祝石(ルーナ)を使うっていうのは現実的ではないわね。
 
『もしも毎日使いたいんなら、ランク5かランク6ぐらいの幻魔石が必要やな』
「そんな高ランクの幻魔石が……!? ううう、どういたしましょう……。さすがにそのランクの幻魔石を手に入れる伝手がないです。どうしましょう……」
「こちらでも探してみよう」
「ありがとうございます、ニグム様」
 
 手の甲に手を重ねられる。
 顔が熱くなる。
 実際にランク4の幻魔石をいただいたので、ちょっと期待してしまう。
 いや、もちろん自分の方でも探すけれど。
 
「お二人とも、そろそろ会場の方に向かわれてはいかがでしょうか?」
「ああ、そうだな。では行こうか。その――婚約の件は、いいな?」
「は、はい。もちろんです」
 
 
 
 会場はサービール王国王立学園の中庭。
 昼間はお茶会形式。
 ニグム様にエスコートを受けながら、会場に入る。
 私とニグム様が入ると、会場の空気が少しだけ緊張した。
 
「フィエラシーラ!」
「ユーフィア」
 
 誰よりも先に話しかけてきたのはユーフィア。
 ニグム様の腕に手を回していたけれど、それを外して両手を握り合う。
 
「婚約が正式に決まったのですわね。おめでとうございます!」
「ありがとうございます、ユーフィア」
 
 切り込み隊長かな?
 ユーフィアがそう言って祝福してくれたので、周囲にも知られてしまった。
 正式に婚約したので聞かれたら答えるつもりだったけれど。
 
「フィエラ」
「は、はい?」
 
 手を引かれる。
 なんだろうと思っていると、中庭の真ん中に連れていかれた。
 交流会のお茶会に集まった人々からの視線が痛いのだけれど!?
 
「あの、ニグム様!?」
花真(かしん)王国の第一王女、フィエラシーラ・花真(かしん)姫。どうか卒業後もフラーシュ王国に来て我が妻として、王妃の椅子に座ってほしい」
 
 きゃーーー!!
 女性陣の甲高い悲鳴。
 こ、こ、こ、公開プロポーズ……!?
 目の前に跪き、両手を握られて見上げられ、そんなことを言われる。
 あわわわ、と突然のプロポーズに混乱していたけれど、ぎゅっと目を瞑ってから、はあ、と息を吐く。
 
「――はい。よろしくお願いいたします」
 
 私が意を決して答えるとさらに大きな声が中庭にあがった。
 立ち上がったニグム様の嬉しそうな笑顔が可愛いと思ってしまう。
 そのまま腰に腕を回し、空いている席にエスコートしてもらった。
 私の後ろからユーフィアがついてきて、同じ席に座る。
 
「あ、あの、聞いていませんが」
「わかりやすいだろう? それよりも、中央部の言語は間違いなかったか?」
「あ……」
 
 ニグム様が言っていた言葉を思い返すと、ニグム様が公開プロポーズで話していた言語は中央部の言語だった。
 
「はい、完璧でした」
「これからもっと君の国の言葉で伝えていく」
「は、はわ……」

 はい、と顔が熱いまま俯いて答える。
 ジトっと私たちを見つめるユーフィアの冷たい眼差し。

「冬季休みもフラーシュ王国に行くのですか?」
「いや、今国内はかなり荒れている。フィエラが来るのは少し危ないと思う」
『せやな』
「そうなのですね。では、冬季休みはサービール王国の自宅で研究しております」
「ああ。……俺は国に戻って色々始末をしてくる」
「あ、ま、まあ、あの……ほどほどに……」




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