その笑顔を守るために
「僕、前に乗せてもらいますから…大野先生と原田先生…後ろに乗って下さい。」と、山川はさっさと助手席に乗り込んでしまう。

仕方なく瑠唯が大野と共に後部座席に乗り込むと、不意に大野が肩を寄せて…彼にしては小声で呟く。

「久しぶりに俺の顔見てフラッシュバックか?院長からはこっちに来て落ち着いているようだと連絡受けてたんだけどなぁ。」

「いえ…大丈夫です。こっちに来てからは…全く…夜も眠れていますし、問題ありません!」

瑠唯がきっぱりと応えると

「そうか…ならいい…なにかあったら必ず言えよ!オペ中に万が一の事があったら取り返しが付かない…」

そう言って横を向くとそれきれ口を閉ざす。

瑠唯は素直に「はい…」と一言だけ応えた。

運転席の孝太にはその話しが聞こえていたのだが、何故かその会話の意味を問うのは憚られて…二人の間に何か触れてはいけない事情があるような気がして黙っていた。山川も何も言わない。

そんな空気を払うように孝太が訪ねる。

「先生方…お腹は?何処か食事にでもよりますか?」

「いや…機内で食っちゃ寝、食っちゃ寝だったからなぁ〜俺はいい」とぶっきらぼうに大野が答える。

「山川先生は?」

「僕も似たようなものかなぁ。君が休憩したければ付き合うよ。」と笑顔で山川が答えた。

「俺は大丈夫なんで…じゃあこのまま高山院長の所で良いですか?あっ…山川先生、その後お帰りになるんでしたら何処へでもお送りしますよ!」

孝太の申し出に

「ああ…じゃあ頼もうかな。高山院長に挨拶したらそのまま自宅に帰るよ。僕も流石に今日は疲れたから…」

「ご実家の病院の方は宜しいんですか?ご家族も待ちわびていらっしゃるのでは?」

「いや…いいんだ。実は今日帰ること知らせてないんだ。」

「ええー!そうなんですか?」と驚く孝太に

「ああ…なにかとうるさくて。」と山川は苦笑いする。

「御曹司も色々大変だな。」と大野が茶化した。




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