御曹司の俺には興味が無いだと?〜もう1人の俺を愛する秘書補佐
【本当の彼女を知る日~陸】
「北郷さん。久々に週末は例のところで泊りますから」
「かしこまりました。ごゆっくりお過ごしください」

俺には秘密がある。

いつも煌びやかな世界に身を置き、次期社長として務める仕事は、気を緩める時間が無く、休まる暇がない。
月に何回か、休日に北郷さんしか知らないマンションで、俺は1人で過ごす。
本に囲まれ、音楽が流れる俺だけの空間。
「あぁ、幸せだな」
この時間があるから、俺は俺でいられる気がする。

いい天気だなぁ・・・外に出掛けるか・・・
秋も深まり、あの人に海外からの来賓が紅葉を見に行くから、一緒に来いと言われたけど、
「それは社長の仕事でしょうから、任せます。それに、私はそういうことは、好きではありません」
そう言って、断っている。
俺の時間まで壊さないでくれ。

いつもワックスで纏めてる髪を無造作に下ろし、コテで緩くウェーブを掛ける。
前髪は目が見えないように下ろし、顔がバレないようにして・・・
そして眼鏡を掛けたら・・・
これで誰も、俺が財閥御曹司の國宮空斗と分からないだろう。

外に出掛けて、何をするわけでも無く、いつものように散歩する。
たまには違った道を歩くか・・・
しばらく歩くと、図書館があった。
こんな近くにあるのに、知らなかったなぁ・・・寄ってみるか。

中に入ると、綺麗で結構広い。
静かでいいなぁ・・・本に囲まれて、心が落ち着く。
俺は初めて来た図書館を、端から見て回った。
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