フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!

6 お礼とお詫びと恋心

 会場につくと、急いでブーケを仕上げていく。
 後輩も私のレクチャーで、同じようにリースを手早く作ってくれる。

 白を基調とした花たちをリボンで止めて、アレンジを完成させる。
 どれもウェディングにぴったりな花たちで、触っているだけでこちらも幸せな気持ちになってくる。

 けれど、浸っている場合でもない。
 これを式の開始までにすべて作り終え、会場に飾らなくてはならない。

 ある程度数がそろったところで、会場内にそれを飾りつけていく。
 あと少しで、新郎新婦が会場に到着する。
 間に合うだろうか……。

「美緒、高いところのものは俺に渡せ」

 いつの間にか社長が隣にいた。
 スーツのジャケットは脱いでいて、袖まくりをしている。

「社長、何で――」

 社長が以前言っていたことを思い出す。

『俺は経営者で、会社を動かすのが仕事だ。利益を最大化し、会社を成長させなければならない。夢というよりも、俺の使命だな。そのために俺は生まれてきた』

 その時に思ったのは、この人とは相容れないということ。
 彼は従業員のように、汗水流して働くようなことはしないのだと思っていた。

 なのに、どうして?

 すると社長は私の手からリースをさっと奪い、「ここでいいか?」とその上部に掛けながら言った。

「お前のポリシーだろ? 顧客が楽しみにしている晴れ舞台、台無しにするわけにいかないだろう」

「社長……」

 その言葉に、胸が甘く跳ねる。
 思わず声を漏らすと、社長は入り口付近にいた他の部署の社員に声をかけていた。

「おい、暇ならこちらを手伝ってくれ」

「え、社長……?」

 彼女たちは一瞬目を見開いたのち――

「はい、お手伝いします」

 そうやって手伝ってくれる人数も増えていく。
 社長は的確な人員配置をし、私に指示を飛ばすよう仰ぐ。

 何とか会場設営を無事に終えた頃、会場に新郎新婦がやってきた。

「わぁ……すごい」
「思ってた以上です!」

 その二人の笑顔に、私はほっと胸をなでおろした。
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