フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
 手を止め、慌てて屋上へ急ぐ。

 すると、低い大きなモーター音が聞こえる。
 ブロロロロ……

 突如大きな風が吹いたと思うと、目の前に大きな機体が現れた。
 それは、『御笠グループ』の文字が書かれたヘリコプター。

 ゆっくりとヘリポートに着き、金井さんが降りてくる。
 ヘッドセットを外した彼は、いつもと同じようにニコリと微笑んだ。

「お待たせしてしまいましたね、南戸さん」

 そう言って、後部座席開けると、そこに乗っていた箱を私の台車に乗せてゆく。
 中を覗けば、水切り処理を終えた切り花たちが入っている。

「金井さん、これ……」

「お花がつぶれてしまったのでしょう? 社長が御笠家ご用達の華道家の先生に頼み込んで、ご用意いたしました」

「え、社長が⁉」

 言えば、金井さんは私の肩越しににこっと微笑む。
 振り向けば、不敵に微笑む社長がいた。

「緊急事態だと伝えたら喜んで出してくれた。美緒、それで間に合うだろうか?」

 それだけで、胸がいっぱいになる。
 社長が、私のために――たったひとつの、結婚式のために。

「はい!」

 私は頷くと、急いで会場にそれを運んだ。
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