義兄と結婚生活を始めます
「なんですか?」

「…いや…えぇえ〜……なになに?何かあったの?」


"何か”を察した涼介はニヤニヤすると、和真へ耳打ちした。


「義妹ちゃんは、妻のフリ、なんだよな?」

「…っ、この書類とファイル、確認しましたので、すぐに進めてください」


ゴホンと咳払いした後、和真は書類を涼介の顔にバシッとたたき当てる。
書類を受け取った涼介は、これ以上言及はせず、自分の業務へ戻っていった。

キーボードを叩き始めると、発熱時の自分の状態をよく思い出せない自分のことを考えていた。
あおいに何かを言った記憶は朧げにあるものの、何を口走ったのかまでは思い出せない。

ただ、熱のしんどさの中で、あおいがそばにいてくれたことに、とても安堵したことはしっかりと覚えている。


「……はぁ……」


小さなため息をこぼしながらも、休んでいた分の仕事を確認していった。

今朝のあおいの様子を思い返す和真。
特に変わったところはなかったが、相も変わらず自分のことを心配する言葉をかけてくれたことは、特に印象に残っていた。

一瞬、あおいの笑顔を思い浮かべては、仕事を着実に素早くさばいていった。














…ー

放課後の明望学園の自習室では、祐希とあおいの勉強会が行われていた。

あおいのノートに丸付けをする祐希の手を、緊張感のある真剣な眼差しで見つめるあおい。
最後の問題で手が止まった。


「はい。ここ違う」

「うぅ…やっぱり…ちょっと自信なかったんだよ~…」


返されたノートを見て落ち込むあおいに、祐希は笑って教科書を開く。


「大丈夫だって。前より基礎もしっかりついてるし。ほら、ここだって公式当てはめて解けてるじゃん。自信持っていいって!」

「ありがとう…」


笑顔の祐希に言われて見直すと、なんとなくでも自信と呼べるような、熱い気持ちになってくる。
新しいページを開くと、祐希へ渡した。


「もう一度!問題解く!」

「おっけ。じゃあ、少し待っててな」


和真の体調が悪い間は、勉強を休んでいたため、久々の勉強会。
問題を作っている祐希に視線を送ると、告白された日のことを嫌でも思い出してしまう。

祐希も同じなのか、なるべく意識しないよう、普段通りの会話を心がけていた。


「ん?」


考え事をしながら見ていたため、ついに祐希と目が合ってしまい、すぐさま逸らすあおい。


(し、しまった…あからさますぎた……)


気まずさが出てきてしまうと、机の下で指をもじもじさせる。
すると、あおいの前に、ノートが返却された。


「ほい、とりあえず五問ね」

「う、うん…!」


祐希が考えてくれた問題を、公式を使いながら解き始める。
あおいが解くのを待っている間、今度は祐希がじっとあおいを見つめた。
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