義兄と結婚生活を始めます

4話

それから、あおいが目を覚ますと、カーテンの隙間から差し込んでくる明るい日差しをボーっと見ていた。
ハッと意識が覚醒すると、すぐに体を起こす。


(ウソ!!私、そのまま寝てた!?)


改めて視界に入ってくる部屋に、自分の家ではないと寂しさがじわじわとにじみ出てくる。


「…って、そんなのに浸ってる場合じゃない!今何時!?小鳥遊さんは…!?」


手元にあったスマホの画面を開くと、表示されていた時間は11時を過ぎていた。
すぐにベッドから降りると、スリッパを履いて慌ただしく部屋を出る。


「あの!!小鳥遊さん!ごめんな、さ…い……」


リビングのドアを勢いよく開けるあおい。

しかし、和真の姿はなく、部屋は静まり返っていた。
そして、引き返して隣の部屋の和真のドアを叩く。


「あ、あの…小鳥遊さん、ごめんなさい、私…寝坊しちゃって…」


あおいが声をかけても、何度ノックをしても反応は全くなかった。
少し待っても出てくる様子も、何か音がすることもない…。

そのまま、あおいはリビングへ戻った。


「どうしよう…怒ったのかな…」


不安と緊張が重なりかけたとき、ダイニングテーブルにラップで包まれた一枚のプレートがあることに気づいた。
近づいて見てみると、プレートには綺麗なオムレツとベーコンエッグが盛られている。

さらに、プレートの横にパンが入っている袋と一緒に、折りたたまれた紙を見つけた。
紙を手に持って開いてみると、そこには丁寧な文字で書かれた和真からのメッセージがある。


『おはようございます。仕事があるので、夜に帰ります。即席のスープがありますが、好きにしてください。何かありましたら、下記の連絡先へメッセージをください。折り返します』


読み終えたあおいは、メモをテーブルに置いて、プレートを見つめた。
そして、自分のお腹を擦ると気づく。


「…そういえば…昨日の昼から何も食べてないや…」


朝食を食べてから結婚式場に向かい、その後は慌ただしく代役や新居に来たままだった。
お腹を擦る手に視線を落とすと、さらに気づく。


「服も昨日のままだった!先にシャワーを浴びよう」


パタパタと部屋へ戻ると、新しい着替えや洗顔セットなどを持って、バスルームへ向かう。
一度ドアを開けた先が納戸であったりもしたが、洗面所と浴室が別になっているバスルームへ辿り着いた。

シャワーを浴びた後は、化粧水などのスキンケアをして、髪の毛は乾かさずにリビングへ戻る。
サッパリしたためか、グウゥと鳴り始めるあおいのお腹。

空腹感を認識すると、食パンの入った袋とプレートを持って、キッチンへ向かった。
昨夜に使用したケトルに水を入れてお湯を沸かし始め、食パンを取り出してトースターへ入れ込む。

「…あ、バターとかあるのかな?」


冷蔵庫の扉を開けると、ほとんど物が入っていない。
しかし、おそらく和真が使用したであろう様子の、開きかけのバターはあった。
何も入っておらず、ひんやりとした冷蔵庫を一通り眺めた後、あおいは冷蔵庫の扉を閉める。


「え…このバター…テレビで話題になってた…高級のバターだ…!!」


驚くあおいは、同時に使用していいのか少し悩んだ。
しばらく悩んだ後に、誘惑に負けたあおいは一度きりの使用を決めた。

バターを塗れるように、スプーンかバターヘラを探し回る。


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