義兄と結婚生活を始めます
あおいを離すと、すぐさま顔を見て確かめるすみれ。


「ご飯とかちゃんと食べさせてもらってる!?小鳥遊さん、変なことしてないし、させてないですよね!?」

「ご飯などは作っていただいています」

「はぁあ!?」

「今朝はフレンチトースト作ってもらったよ」

「は、はぁあ!?」


無表情で答える和真に、笑顔で答えるあおいの言葉。
戸惑いが追いつかないすみれの後ろから、母親が顔を出す。


「すみれ、少し落ち着きなさい。小鳥遊さん、いらっしゃいませ。手狭とは思いますが、中へどうぞ」

「失礼します。こちら、よかったら皆さんで飲んでください」


海崎家に上がると、持っていた小さな紙袋をあおいの母親へ渡す。
中を見ると嬉しそうな声を上げた。


「まぁ!紅茶とコーヒー?ありがとうございます。昨日、すみれがケーキや焼き菓子を作ってくれたので、一緒に出させていただきますね」

「ご自宅にパティシエがいると、本格的なスイーツが食べられますね」

「ふふ。十分美味しいのに、まだまだって言うんですよ。ふふ」


その話を聞くと、話が盛り上がる姉妹へ視線を送る和真。
時折見せるあおいの笑顔を見て、込み上げるものを感じた。

あおいが和真の視線に気づくと、顔を上げて和真の元へ。


「和真さん、こっちです」

「…はい」


隣に並んでリビングへ案内すると、あおいたちの父親が座って待っていた。


「失礼します」

「ど、どうも…!」


和真が会釈をすると、ぎこちなく会釈を返される。
用意された座布団に、正座して座る和真とあおい。


「先日は、あおいさんを連れ出してしまい、かつ話し合いの途中で申し訳ありません」

「しゃ、謝罪は十分いただきましたので、もう…。その、すみれと結婚しないとなると、今日は…」

「……」


あおいは黙ったまま和真の様子を横目で見た。
すると、座布団から降りた和真は正座のまま床へ頭を下げる。


「本日は海崎あおいさんとの結婚の許しをいただきにきました。海崎すみれさんに対する数々の非礼は、これから詫びていきます。どうか、あおいさんとの結婚を…」

「お、お願いします!」


和真に続いて頭を下げるあおい。


「……すみれの件がダメなら今度はあおいを…?いい加減にしてくれ…!」

「お父さん!和真さんだって知らなかったって、昨日」

「黙ってなさい!!」


父の大きな声に、ビクッと肩が跳ねるあおいは、いまだ頭を下げ続ける和真を見た。
キッチンから母親がやって来ると、優しい笑みで口を開く。


「あおい。お茶を淹れるから、手伝ってくれる?」

「でも…!」

「お姉ちゃんのケーキ、切ってちょうだい」


母に手招きされ、あおいは後ろ髪を引かれる思いで、父と和真を残し、リビングを去った。
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