義兄と結婚生活を始めます
エピローグ
…ー

あれから数年が経ち、あおいの黒髪は腰近くまで伸びていた。


「うーん…そろそろ切ろうかなぁ…でも、まとめやすいし…うーん…保留っ」


髪をひとまとめにすると、鏡を見て着ているスーツの左右を確認した。
部屋を出れば、香ばしいコーヒーの香りが漂う。


「おはようございます」

「おはようございます!たまごサンドだっ。朝ごはん、ありがとうございます」

「いいえ。どうですか?販売部の方は」


持っていたマグカップを置くと、リビングに来たあおいを迎える和真。
カッターシャツに、深緑のネクタイを結んでいた。


「あはは…覚えることがいっぱいで…まだ先輩たちにご指導してもらってます…」

「焦らなくて大丈夫ですよ」

「…和真さんも、帰りが遅い日増えてるので…無理しないでくださいね…」

「…ふふ、寂しいときの顔。スケジュールを調整しますよ」


クスッと笑って、あおいの頬を撫でる。


春からあおいは和真の会社へ就職し、和真は専務に昇進していた。
二人の関係は、あおいの入社式にて、和真の口から公にされていたため、下手な噂は立たなかった。

和真が思い出したように、あおいへ一枚の葉書を差し出す。


「お姉さんから届いていました」

「ありがとうございます!……わぁ!フランスの三号店の出店、任されるって!」

「喜ばしいですね」


クルクル回ってはしゃぐあおいを抱き止める和真。


「この前もそれでケガしそうだったでしょう…」

「えへへ。あ。海外といえば、涼介さんと由梨子さんはお元気ですか?」

「変わりなく働いているようです。…仕事ができる人材を期限付きで出向させたのは良かったです」


和真を見上げて笑うと、自分の席に着いてたまごサンドを頬張った。

涼介と由梨子は、正式に小鳥遊の各グループ企業に就職し、海外へ視察という名目で赴任していた。

ただし、自分も席についてコーヒーを飲む和真の眉間には、しわが寄っているため、納得していないのが伺える。
和真は小さくため息をついた。


「社長も海外展開の話を丸投げしてきたときは、説得が大変でしたよ…」

「あはは……でも、おとう…社長も、和真さんを信頼して任せてくれたんじゃないですか」

「…まぁ……」


笑顔のあおいを見ると、渋々頷くしかない。
たまごサンドを食べ終えると、マグカップに入っているカフェラテを飲むあおい。


「…そういえば…この前、社長が販売部に来てました」

「……またですか…。田中さんに言っておきます…」

「事前に、というのはお伝えしてください…」


苦笑いしてしまうあおいと、難色を示す和真。
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