義兄と結婚生活を始めます
「…何、それ…」
質問をしてくる涼介の問いには答えず、少しの気まずさを帯びる表情の和真。
「…お前…ゴリゴリにデートする気満々じゃん…!」
「違います。…あおいさんが少しでも楽しんでもらえるように…と、思ってですね…」
和真が開いていた画面は【100人に聞いた!彼女が喜ぶデートプラン編】という見出しが大きく乗ったネット記事だった。
気恥ずかしそうに涼介へ言い訳の言葉を並べる和真の隣に、椅子を持ってきた涼介は座った。
「はーいはい。いいじゃんいいじゃん!見学させてよ」
「…バカにしてますよね?」
「してねーよ。俺は嬉しいの!ほらっ、気にせず続けた続けた!」
和真の背中を叩くと、ニコニコしながら様子を見始める。
付き合いの中で学んでいた和真は、涼介が絶対に去らないことを感じ取った。
小さくため息をつくと、諦めて記事を見ながらメモを取り、続きを再開する。
ブツブツと呟き、メモにスケジュールを書き込んでいく和真の様子をチラリと見る涼介。
「…俺さー…大学のとき最初に和真に声かけたとき、あの小鳥遊グループの息子って知らなっかたんだぜ~」
「でしょうね。それに、ロボコップなんて初めて言われましたよ…古すぎません?」
「当時の俺は映画鑑賞にハマってたからね~。ロボコップってマジでいたんだ!!って感動したもん」
涼介の話に答えながら、じっと見ていたパソコンの画面を落とし、書くことに集中し始める和真。
懐かしそうに笑う涼介は、話を続けた。
「でも、無表情でなぁーんにも動じないから、周りも遠ざけ始めるじゃん?」
「……なんで僕は貶められているんでしょうか…」
「そこで俺は思ったよ、コイツ絶対イイやつ!!って」
ペンを持っていた手が止まると、涼介に視線を向けた。
「だからさ!今、和真があおいちゃんって子のために、自分から動いてるっていうのが嬉しんだわ。親心?的な?」
温かな眼差しの涼介は、本当に嬉しさを感じてくれていることを和真は読み取る。
そんな涼介から視線を逸らして、再度ペンを走らせた。
「涼介は僕の親じゃないですよ」
「ひっで!ここは感極まるところだろ!」
「何でですか?」
涼介は子どものように頬を膨らませて、ふざけた様子を見せる。
ようやくまとまったのか、和真はペンを置いて書き終えたメモを見直した。
あとから涼介も覗き込んで見る。
「上手くいくといいな…」
「はい」
フッと微笑んだ和真の頭には、笑ってくれるあおいの姿があった。