義兄と結婚生活を始めます
「次に、水族館の件ですが…一方的に言ってしまったと思いました。改めて、次の土曜日に僕と水族館に行きませんか?」
「はい…行きます」
明るく返事をしたあおいに、和真はホッとする。
ポケットからスマホを取り出すと、行き先の水族館のホームページを開いて見せた。
「ここの水族館がリニューアルオープンをしていて…」
「あ、ここの水族館、気になってたんです!」
「ぜひ、あおいさんと一緒に行きたいです」
和真は一緒に見ていたスマホの画面から目を離し、あおいを見つめる。
急に真剣な眼差しで見つめてくる和真に対して、胸が早鐘を打った。
「よ、よろしくお願いします…!」
耳に髪をかけながら下を向いて答えたあおい。
「当日は、朝食は結構ですよ。準備ができたら玄関に集合して出ましょう」
「わかりました」
放心状態でケーキを食べ終わったあおいに、和真は自分が片付けることを申し出た。
あおいは、頭を下げるとそのまま自室へ向かう。
ドアを閉めた途端に、現実を理解したのか顔が真っ赤になる。
(え!?これ…デート…!?ど、どうしよう…!!)
両手で頬を抑えていたあおいは、バクバクと鳴る心音と一気にやってくる緊張感に、その場にへたり込んだ。
(なんで!?なんで突然デ、デートなんて…!!いや、もしかすると和真さんのことだから、デートっていう意識はなくて、単に気分転換に行くとか!?)
「……大人って…わかんない…」
混乱するあおいは、ポツリと呟いた後に、すぐにクローゼットを開けに行った。
持ってきた服が数枚、掛かっているだけでデート向きの服がないことに焦りを覚える。
バッと振り返ると、スマホをとって千尋へ連絡を取った。
「もしもし?どしたん?」
「ちーちゃぁぁぁん!!」
発信後に電話を取ってくれた千尋に、あおいは泣きついた。
…―
翌朝、ネクタイを締めた和真はカバンを持ってリビングを出ていく。
「それでは、僕は行きます」
「あっ…はい!」
片づけをしていたあおいは手を止めて、和真を追いかけた。
玄関で靴を履いている和真の後ろ姿を見ると、慌ててスーツを掴む。
「…どうしました?」
「あ、あの!…今日、友だちと出かけてくるんですけど…買い物もする予定で…何かいるものとか…あれば…」
「なるほど。でも、特に何もいりません。それと…会計はこれを使ってください」
胸ポケットから財布を取り出すと、中から一枚のカードをあおいへ差し出した。
不思議そうに受け取ると、和真を見るあおい。
「これは…?」
「クレジットカードです。好きな物を買ってください」
初めて持つクレジットカードに、あおいはオロオロした。