義兄と結婚生活を始めます
「む、娘の件については大変申し訳ございません!しかし、親の私から見ても気立ても良く、しっかりとした子です。本日は事情故、管理不足に関しまして、代わってお詫び申し上げます!…ただ…やはり、その…顔合わせも大切ですが、もう一人の娘あおいの大切な入学祝いです。この子だけでもあたたかい一日にさせてあげてくださいませんか?」

「………そうね、こちらこそ失礼したわ。あおいさん…?入学おめでとう」


あおいの父からフイっと視線を逸らすと、そのまま不満そうな顔であおいへ告げる。


「ありがとうございます…あの、名望学園でも精一杯頑張ります」

「あら、一般家庭の出なんだから、多少遅れても問題なくってよ。まぁ…小鳥遊家では全員が優秀な成績で卒業しているもの。良い悪いにしろ、結果を残せればいいと思うわ。小鳥遊の名に泥を塗らなければ」


あおいの言葉にすら刺々しく返事をする女性は、海崎家を認めない存在として明確に決めているのがわかった。
委縮したままのあおいは、それからは箸をとることはなく、ただ俯いたままだった。


「はぁ…気分が悪い。私は帰るわ。車まわしてちょうだい。…兄さん、また後日話しましょ」


女性はそう告げると、先ほどの中年男性と一緒に部屋を後にした。
どうやら、女性の夫なのだろう、後に続いて、部屋の一同にペコリと会釈をしていた。

それを機に、他の者たちも気まずそうに言い訳をして出ていく。
実質、会食が終了したようなものだ。

席には海崎家と小鳥遊社長、和真だけが残った。
社長は湯呑をとり、一口飲みほすと、ふーっと息を吐く。


「まったく…あれ以上話すことはないというのに…」

「…社長…その、大丈夫だったのでしょうか…?」

「ん?あぁ、籍も入れていない形式上の‟婚姻”だからな。本来はあおいさんは義妹なだけで、詮索されたところで何も心配はいらん」


おそるおそる問いかけたあおいの父親は、ホッとしたようなそうでもないような、複雑な気持ちになった。
今度は社長が立ち上がってもう一口お茶を飲んでいると、和真も同じように立ち上がる。


「では、私たちは先に行かせてもらいます。会議や面会がありますので、ゆっくりしていってください」

「え!?」

「海崎さん、今日は有給を取られていたでしょう。休暇は自由に使ってください。送迎の際は三森に行うよう言ってあるので。失礼します」


社長の代わりに和真が説明すると、返答を待たずに二人で部屋を後にした。

海崎家だけが残った部屋は、ただ広い空間となり、静まり返る。
ようやく力が抜けたのか、親子そろって表情や体が緩んだ。
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