義兄と結婚生活を始めます
ようやく高校の入学式を終えたばかりだというのに、‟大学”という先の話が出ても、あおいはピンとこなかった。
(明望学園は大学院まであるって聞いてたけど…やっぱりそこまでいかなきゃなのかな…)
ちらりと和真を見ると、予想した回答を浮かべながら質問をしてみる。
「ちなみに…和真さんは…大学は…」
「大学院までいきました。小鳥遊家は全員ですが、あおいさんは関係ないので別の大学でいいでしょう」
前半は予想通り、しかし後半の返事は思ってもいなかった。
本来であれば自分は、和真にとって義妹であり、あおいにとっては義兄。
お互いに将来のことを考える必要はないはずなのに、どこか寂しさを感じてしまうあおい。
「……違いますね」
「え…?」
「いえ…今はあおいさんが僕の妻なので、大学は明望ではなくて…その、大切な進路なのでいきたい将来に……と、すみません。うまく言えなくて…」
タブレットから顔を上げると、人差し指で頬かいている和真は、うーんと口に手を添える。
ただ、自分のことを考えて言おうとしていることが伝わったあおいは、嬉しくなりクスっと笑った。
「ありがとうございます。お姉ちゃんみたいにできるかはわからないですけど、とにかく今は勉強はいっぱい頑張ります!」
「…僕でよければいつでも聞いていただいて構いませんので」
「はい!」
あおいの笑顔につられるように、和真の口元がゆるんだ。
運転していた三森も、二人の和やかな雰囲気にひっそりとほほ笑んでいた。
…—
自宅についてからは、あおいのやることは決まっていた。
届いた荷物の整理だ。
段ボール箱から出しては、一緒に届けられた本棚へ入れていく。
一般の高校生が習う教科に加えて、分厚い教科書・資料を手に取ると、次第にため息がこぼれてきた。
「はぁ~……段ボール3箱って……ありえないでしょ…。明日必要なものはもう出したし、残りは…うーん、でも小鳥遊さんならちゃんと最後までするよね…そもそもこんなに時間がかからないよなぁ…私ってほんとダメだな…」
ベッドにボスッと倒れ込むと、急激に眠気が出てきたあおい。
すると、制服のポケットに入れたままのスマホのバイブ音に気づいた。
そこでようやく、千尋からの連絡を思い出して、重たい体を急いで起こしてスマホを手に取る。
通知画面はやはり千尋からだ。
「もしもしちーちゃん!?」
「やぁっと出た!心配したよ~」
「ごめんね~!実はね、明望の入学式の後、会食があってね!それで小鳥遊さん一族?的な…人たち…が………」
気が緩んだのか、疲れからなのか…あおいは‟小鳥遊”の名前を出してしまったことにハッとした。