義兄と結婚生活を始めます
「小鳥遊?…どういうこと?」
「あ!あー…え~と、そう!お姉ちゃんの婚約者さん!あの有名な小鳥遊さんなの!」
「うっそ!?ほんと!?なんで黙ってたの~!」
あたふたと事実と嘘を織り交ぜたごまかしを、あっさりと信じてしまう千尋は、電話越しではしゃいだ。
思わずスマホから耳を話してしまうほどの驚いた声に、あおいは苦笑い。
「あはは…入学式のお祝いを兼ねて顔合わせみたいな食事会があって、連絡が遅くなっちゃったの」
「じゃあ私、結構邪魔しちゃったね、ごめん!!」
「そんなことないよ!それにしても、明望学園の教科書とかすごいの…段ボール3箱だよ…」
「はぁ~~~!!?」
そこからは、お互いに入学式の話を聞き合って会話が弾んだ。
気づけば30分以上は話し込んでいた。
コンコン
部屋のドアが叩かれる音にハッとしたあおいは、いそいで通話を切ろうとした。
「ち、ちーちゃんごめんね!明日早いからもう…」
「あ!まじだ、ごめんごめん。また話そうね」
通話が切れたことを確認したあおいは、慌ててドアを開ける。
「すみません!うるさかったですよね!」
「いえ。楽しそうに話されてましたね……」
「はい………?」
一言だけ話した後、和真は黙り込んでしまった。
二人の間にある沈黙から、あおいは和真をひどく怒らせてしまったのではないかと思い、再度頭を下げる。
「本当にごめんなさい!!こんな時間まで話してしまって。次からは気をつけるので、あのっ、お父さんのことは…!」
「海崎さんは辞めませんよ。今日は休暇申請されてたので。何かあたたかい物を飲もうかと思うのですが」
頭の上から聞こえてきた言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
無表情の和真と言葉の意図を必死に考えるあおいは、ようやくコーヒーの用意が必要だと気付いた。
「はい!すぐに用意しますね!」
「いえ、そうではなく」
横切ろうとするあおいの腕をとっさに掴むとグラリと倒れかける。
ポスッと和真の胸の中に体を投げ込んでしまったあおいは、真っ赤になった。
「すみません。何か飲みませんか、い…一緒に」
「……は、はい……」
あおいを見下ろしたままの和真。
見上げるあおいは、その耳が赤いことに気づく。
和真は、そっとあおいの体を戻すと、先にリビングへ向かった。
ドキドキと鼓動が早まる胸を押さえるあおいは、キュッと目を閉じてから開き、和真の後に続いた。