義兄と結婚生活を始めます
ケトルに水を入れる和真の後ろで、コーヒー豆を挽いた粉末が入った缶を取ろうと手を伸ばしていたあおい。
しかし、取った缶の蓋を開ければ、空っぽであり、まだ買った袋から移し入れてないことに気づく。
背伸びして戸棚の奥へ手を伸ばすが、なかなか届かない。
すると、横から手が伸びてくると、目的とした袋と[ココア]と書かれた袋が一緒に取られた。
「もう夜も遅いですし、あおいさんはココアの方がいいですよ」
「あ…ありがとうございます…」
手渡された袋を受け取るものの、どこか納得できないような、モヤッとした気持ちになった。
その気持ちを抱えたまま、コーヒーの粉末を缶の中へ移していく。
お湯が沸いてきたのか、シューシューという音が後ろから聞こえてくると、あおいは振り返った。
「あの!…和真さんもココア飲みませんか…?」
あおいからの提案に対して、答えに考えながらも、黙ってコンロのスイッチを切る和真。
「甘さは控えめにしますので!」
「…いえ、あおいさんがいつも作るココアでお願いします」
少し考えた結果、同じものを飲むことを承諾した。
すると、あおいは引き出しから鍋を、冷蔵庫から牛乳を取り出す。
パタパタと動くあおいの動きを目で追いながら、目の前で行われるココア作りを観察した。
和真は途中、ココアの袋の裏側にある説明書きを見たが、あおいがまったく違う行動をしていることが不思議でたまらなかった。
「あおいさん、ここに書いてあるものと違いますが…」
「お母さんに教えてもらったココアなんですよ」
どこか得意げにフフッと笑うあおいは、ケトルのお湯を使いながら、ササっとココアを仕上げた。
二人分のマグカップに注ぎ入れる。
「お口に合うといいんですけど…」
少し不安げに和真の様子を見たが、和真はリビングへ行くことはなく、すぐにマグカップを手に取った。
湯気が立つココアを冷ましつつ一口飲んだ。
「……美味しいです。甘さもほど良いですね」
「よかったです。牛乳を入れるとコクがあるんですよ」
ホッとするあおいも、一緒にキッチンでココアを一緒に飲んだ。
猫舌なあおいはチビチビと飲み、時折「あつ…」と小さく呟く。
「…ふ…っ」
「え?」
「いえ…ふっ、その…ふふ、ペンギンみたいで…」
よほどツボにはまったのか、笑う口元を必死に抑え、肩を震わせる和真。
あおいはペンギンと例えられてしまったことがわからず、目をぱちくりさせながら和真を見ていた。
(ペンギンみたいな飲み方してたのかな…でも、飲み方知らない…けど…)
楽しそうに笑ってくれるなら、いいかなと思ってしまうあおいだった。