義兄と結婚生活を始めます

15話


エレベーターでロビーに降りると、すでに三森と車が待っていた。
三森は二人にペコリと頭を下げると、すぐに後部座席のドアを開ける。


「どうぞ」

「ありがとうございます…」


和真は先へと促すものの、なかなか慣れない気持ちのまま乗り込んだあおい。
それからすぐに車が発車すると、あおいは小さく深呼吸をする。


「…まだ緊張されてますか?」

「あはは…そうですね…普通学校でも明望学園って有名でしたし、小鳥遊の名前で通うわけなので…あ、クラスの子の親が結婚式に来ていたみたいで…その…どう伝えたらいいですか…?」

「僕の妻であることをそのまま伝えていただいて構いません。何かあれば報告してください」

「は、はい」

「それから…」


言葉を止める和真を不思議そうに見つめていると、和真が同じように見つめ返してきた。


「笑ってください」

「へ…?」


一言だけ告げると、それ以上は何も言わず前を見続ける。
ぽかんとしたままのあおいは、学園に着くまでひたすら言葉の意味を探し続けた。

しかし、答えがでないまま、とうとう学園の校門前についてしまったのだ。
三森がドアを開け、車から降りかけたあおいの手を和真は取った。


「大丈夫ですよ」


すぐに離すと、和真へ返事をする間もなくドアは閉められる。
車から一歩下がるとすぐに発車し、見えなくなってしまった。

建物の大きさだけでなく、一般高校と違う雰囲気を漂わせる学園を前に、あおいは鞄を持つ手に力が入る。


(大丈夫…)


和真の言葉と同じことを思った自分に気づいて、フフッと笑ったあおいは顔を上げて校門をくぐった。




教室についた途端、すぐに女子生徒が集まってくる。


「小鳥遊さん!ご機嫌よう!今日の放課後こそ、お茶をいたしましょう」

「あらぁ、小鳥遊さんの髪の毛、とても綺麗ですわね」

「和真様とはどこでお知り合いに?」


入学式と変わらない矢継ぎ早な質問に圧倒されるあおいは、先ほどの気力がそがれそうになった。


「えっと…か、和真さんとは…その…一緒に住んでます…」


顔を真っ赤にしながら、一言の説明で終えるあおい。
和真に言われていたとしても、とても‟夫”と言うのは気恥ずかしいと感じたのだ。


「一緒に暮らしているって素敵ですわ!」

「本で読んだことあります!お姉様はどのような方なの?」

「もう!あおいさんに聞いてるのは私よ!」

「あら!私だって!」


置いてけぼりなあおいをよそに、急ぎ早に質問の答えを待つ群衆。
あおいが苦笑いしていると、後ろから怒った声が響いた。

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