義兄と結婚生活を始めます
ちょうど片づけを終えたあおいが、まだキッチンに立っている。
戻ってきた和真を見ると、声をかけた。
「あ、今お湯を沸かしてますから、コーヒー淹れますね」
「……ココアを…」
「え?」
「あおいさんが作ったココアが飲みたいです」
それだけを伝えると、ソファーに座った。
ぼんやりしている和真を見ると、自分にできることをやろうと決めた。
しばらくして二人分のマグカップを持って、あおいも和真の元へやってくる。
カップを受け取ると、すぐに口をつけて、ゆっくりと飲んでいく。
飲んでいる途中、まだカップの中に残るココアをじっと見つめる和真。
あおいは少し離れて隣に座ると、自分もココアを飲んだ。
「…あの、お友達ができました」
「そうですか」
「えっと、明望学園のお昼ご飯って、すごく豪華なんですね!びっくりしたのと、すっごく美味しかったです。和真さんが作ってくれたオムレツと同じくらい美味しくて!」
ココアを飲む和真に今日の出来事を話してみる。
特に、大きな返事もないが、ココアを飲んでいる間の沈黙を埋めようと引き続き話を始めた。
「あと、あと、新しい友達なんですけど、幼なじみらしくて…咲ちゃんって言って一般受験で入ってきたんです」
「そうですか」
「その幼なじみの未来ちゃんがすごくサバサバした性格で、でもとっても品があって…えっと、仲良くなれそうなんです…」
「そうですか」
同じ返事を残して、再び沈黙になるリビング。
あおいは心の中で落ち込むと、祐希のことを話そうと顔を上げた。
「敬語、抜けませんね」
「え…」
「そろそろ僕の前では気を抜いてほしいのですが…まだダメなんでしょうか?」
頭を抱えるように片手で顔を覆い俯く和真は、小さくため息をこぼした。
その様子におどろいたあおいは、あたふたしてしまう。
「すみま…ご、ごめんなさい!学校楽しいでっ…楽しい!…です……友達も仲良くなれそうでっ……す…!」
「……ふ」
「…~~っ、和真さん笑ってますよね…!?」
「いえ…」
顔は隠したままだが、肩を震わせる和真の様子を察したあおいは、面白がられていることに顔が真っ赤になった。
徐々に顔を逸らしていく和真の顔を見ようと、あおいはグイグイと近づいていく。
「違うならこっち向いてくださいっ」
「ふっ…いえ、ほんとうに…っ……」
ようやく顔と体勢を戻した和真に、詰め寄るように顔を覗き込んだ瞬間、互いの距離が思いのほか近かったことに気が付く。