義兄と結婚生活を始めます
自室に入った途端、あおいは腰を抜かして、その場に座り込んだ。
両手で顔を覆うと、頬の熱さを感じる。
「なんなのぉ~……?」
急接近される理由もはっきりしないまま、あおいは服に着替えると、リビングに戻った。
先ほどの出来事に気恥ずかしさが大きかったが、ダイニングテーブルの完璧な食卓を前に、和真が座って待っていた。
「お待たせしました…!」
「いえ。いただきましょうか」
あおいが席につき、黙々と食事をしていく。
変な緊張感に似た雰囲気に包まれた食卓も、いまだに慣れないあおい。
海崎家で食事は談笑しながらだったため、今の話していいのか悩む。
しかし、ふと和真との生活も半月が過ぎていることに気づいた。
「おかわりしますか?」
「お願いします」
器を受け取る手と手が触れると、ピクリと反応してしまうが、平常心を意識してご飯をよそいに行った。
テレビも何もついていない部屋は、静かな部屋だ。
再度テーブルに戻り、和真へ器を返した。
「…今日は味付けが濃かったですね…すみません」
「塩分過多になりますが、ご飯は進みます」
(……えっと…ご飯が欲しくなるって意味、だよね…?)
和真の言葉の意味を探すのも慣れつつあるかと思ったが、そうでもなかった自分にがっかりする。
「…濃いのも美味しいです。あおいさんの料理は。…伝わってますでしょうか?」
「は、はい!…ありがとうございます」
素直に嬉しいあおいは、はにかんだ表情になった。
和真も、その表情を見ると少し口元が緩んだ。
そしてあおいよりも先に食べ終えると、自室に行った。
充電していたスマホを取ると、何度か操作して耳に当てる。
しばらくコール音が響くと聞き慣れた声が返事をした。
「…なんだ、朝に連絡が来ると思ったぞ」
「由梨子を僕の部署に配属させた意味は何ですか、社長」
「プライベートでも父さんとは呼ばんのだな、まったく」
「話をそらさないでください」
椅子に座ると、電話口の小鳥遊社長からの答えを待つ。
「本人が希望しただけから、そうしたまでだ。仕事もできるんだ、困ることはないだろう?」
「…そういう問題ではなく、結婚式に呼んでいないことも含め、何を考えているんですか」
「呼んだ方が騒ぎ出すと判断したまでだ。いとこ同士だ、仲良く我が社のために働け。さ、これ以上話すことはないぞ」
和真が答える前に、通話は切れてしまい、ツーツーツーという音だけが耳に残る。
スマホを話して画面を見つめると、目頭をつまみ、小さく息を吐いた。
しばらく椅子にもたれかかっていたが、立ち上がってリビングへ行った。