義兄と結婚生活を始めます
「これ以上、業務以外の話を聞く気も、答える気もありません」

「……わかったわ…」


由梨子が返事をするのと同時にエレベーターが止まり、ドアが開く。


「おっ、和真、ぁあ!?え?なに!?」

「ちょうどよかったです。一緒に来てください」


和真に肩を掴まれて、引きずられるように来た道を歩かされる涼介。


「なになに!?あれ、由梨子ちゃん?どしたの?」

「和真に部署案内してもらってるの。涼介くん、今日三人でランチしない?」

「え~…と、……いいよ」


笑顔の由梨子と横顔しか見えない和真を交互に見て、何かを察したのかニコッと笑って快諾した。
いつになく無表情かつピリついた雰囲気の和真を、涼介は初めて見る。


「ここが書類元の部署です。戻ったあとは、いくつか資料を作成していただくので」

「ちょ、和真!普通に歩かせて…!」


口早に伝えると、またもや涼介引きずるようにエレベーターの方へ戻っていった。
由梨子は、まだ笑顔でひらひらと手を振ると、クスっと笑った。


エレベーター前で待つ間、ひたすら無言の和真に涼介は気まずさを感じる。


「…あ~…なに…、何かあった?」

ドアが開くとエレベーターへ乗り込み、該当の階のボタンを押す。
数人が降りたあと、和真は大きなため息をついた。


「由梨子の異動は社長の指示…というより、本人が頼んだそうです。それから、あおいさんのことも明望学園にいると勘づいたようで……正直、困惑してます」

「なら、もっと焦った顔を見せてよ。うーん、社長が一緒に何か企んでるって線は?」

「今のところはないかと。ただ………朝からひたすら一緒なので…あのパワーの強さに充てられてます…」

「うそ~…和真のそんなとこ初めて見る…。すっごいな由梨子ちゃん。さすがだわ。で?」


癖になっている眉間を押さえていた手を顔から離し、涼介を見る。
エレベーターが止まると、二人は降りてオフィスに向かった。


「ランチってことは、俺からもあおいちゃんのこと聞こうとしてるわけっしょ?どこまで話していいわけ?」

「…とりあえず、偽装以外の話であれば…特には…」

「りょーかい」


ポンッと和真の背中を叩くと、まだまだため息をこぼす和真と一緒に各々の席についた。
しばらくして、由梨子も戻ってくると、笑顔で和真にお礼を言った。



それからは、和真にとっては時間が経つのが早すぎたようで、とうとう昼休憩の時間が来てしまった。
和真から依頼されていた資料作りもすでに終えた由梨子は、勢いよく立ち上がる。

< 95 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop