真白に包まれて眠りたい
18.彼その4

 彼その4。彼とはいろいろあった。私はこの人と初めてホテルに行った。初めて異性の前で服を脱いだ。思い出すだけで気分が悪い。だが後悔はしていない。セックスはしていないし、キスもしていない。そう、何もしていない。それでも何度もホテルに行った。私にとってはただの性欲だった。彼は私のことが好きだった。だが彼もまた、私を依存対象としてみていただけだった。彼の言う「好き」は自分に言い聞かせているような言葉で、自分が言えば満足している、そんなふうに感じた。独りよがりな愛の言葉が苦手だった。それでもいくらかは満たされた。恋心がなくても体を重ねれば情は湧く。私は彼のことが大好きだったし、だけどどうでも良かった。私にとって都合のいい時は好きだった。都合が悪い時は途端に嫌悪の対象だった。仮初の好きを抱えて何度も彼と会った。関係が切れたのは彼その6と出会ってからだった。彼その4に一切興味がなくなった。それでも彼は私を求めてきた。どこからか洗剤の香りがする。彼その6の洗剤の香りがするとどうしても会いたくなってしまうから、もうあの洗剤はこの世からなくなってほしい。もう彼その4なんて、本当にどうでもいいのだった。
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