イケメン御曹司は恋に不慣れ

「ひまりちゃん、ちょっと来てくれる? オーナーに会うのはじめてでしょう、紹介するよ」

「は、はい」
返事をして立ちあがる。もう、なるようにしかならないところまで追い詰められた気がした。

オーナーである浩介さんの前に立ち、勢いよく頭を下げる。

「は、はじめまして。川越ひまりです。よろしくお願いいたします」

「あぁ、よろしく。祐二、ちょっと事務室まで一緒に来てくれ」

浩介と呼ばれたあの人はここのオーナーで、あの時のあの人だったのだ。

私のように慌てることもなく、また驚く様子もなく部屋から出ていった。

私のことはまったく目に入っていなかったのかな。それとも覚えてない?

私はあれからしばらく忘れられなかったというのに。あまりにも無関心といった態度に呆然とする。
< 2 / 70 >

この作品をシェア

pagetop