イケメン御曹司は恋に不慣れ

「あら!? もしかして、佐伯先輩!? 浩介さんですよね!」
「えっと…? もしかして、あかりか?」
「そうです。川越あかりです。覚えていてくれたんですね」
「ああ、覚えてるよ。あまりに綺麗になっていて、すぐにはわからなかったけどな」
姉の弾ける声と笑顔、そして浩介さんの明るい声に嫌な想像が膨らんでいった。

お姉ちゃんは浩介さんと知り合いだったの?と思ったら、もう、姉に惹かれていく過去の男の人たちと同じだと思った。
その後はキッチンでアンドレアさんたちスタッフの手伝いをしていたが、二人が親しげに話していた姿が思い出され、気持ちがざわついていた。

終了の挨拶後も浩介さんに呼び止められることなく、淡々と終わってしまった。
無事に終わったのにすっきりしないのはなぜだろう…。
せっかく早く帰れるというのに気持ちが沈んでしまった私はまっすぐに家に帰ったのだった。
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