イケメン御曹司は恋に不慣れ
驚愕の瞬間
浩介さんが出勤してきた日に姉のことを聞かれるのではないかと考えていたが、特に聞かれることもなく普通にしていた。
その夜のお客様に接客するまでは、本当に何事もなかったかのように普通だった。
いつも通りに注文を受けにテーブルへ向かい声をかける。
「ご来店ありがとうございます。お料理はご予約いただいておりますので、お飲み物のご注文を…」
そこまで声をだしたところで、来店していた客の顔が目に入り全身が凍りついた。
その客は女性と二人で来店していた。私だと気がついていないのか、澄ました顔をして向かいに座る女性にワインの好みを聞いていた。
身体が震えそうになるのがわかり、必死に平静を装うよう、視線をメニューに移し一呼吸する。
「お飲み物のご注文をお伺いします」
震える手でワインの銘柄を控えるが、早くこの場から離れたくて仕方なかった。
キッチンに戻ったところで芹菜さんに声をかけられ、自分が激しく動揺していたことに気付かされた。