イケメン御曹司は恋に不慣れ

「ひまりちゃん、なんか顔色悪いけど具合悪い?」
「芹菜さん…。5番テーブルに注文のワインをサーブしていただいてもいいですか」
「うん、いいけど、大丈夫? 震えてるみたいだけど熱でもある?」
「…あ、す、すみません。少し休んできてもいいですか?」
「こちらは大丈夫だから、スタッフルームで横になってなさい」
「すみません」と口にするのがやっとだった。

5番テーブルの男性客は私を退職に追いやった例の部長だった。

「まさかここに来るなんて…」

私はスタッフルームに下がらせてもらい、自分の手で震える身体を押さえて座っていた。
芹菜さんは私が休憩している間、ホールのスタッフが手薄になることから、祐二さんと浩介さんが打ち合わせしている部屋をノックしていたことは私は知らなかった。
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