人気イケメンダンスグループのボーカル担当『天野先輩』に溺愛されました。
「病院、一緒に行きます」

 天野先輩は目が潤んでいて、本気で心配してくれている様子だった。でも病院に行ったら大した怪我じゃないのがバレちゃう。

「病院は行かなくても大丈夫です」
「本当に?」
「はい」
「……」
 
 先輩は私を見つめながら何か悩んでいる様子。

「……怪我が治るまで、あのちゃんが出来ないこと、代わりにしてもいいですか?」

 天野先輩が言ってきた。
 しかも上目遣いでさっきよりも目が潤んできていた。

「じ、じゃあ、痛いのが治るまで色々よろしくお願いします」

 自分でも震えた声なのが分かる。

 私は、とんでもないことを推しの天野先輩に言ってしまったのでは――。

 天野先輩と今のままの距離でも、心が満たされていて幸せだったはずなのに。
 怪我なんてしていなくて平気なのに、痛いふりをしてしまい――。
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