人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜
病院に着くと、航兄ちゃんはICU(集中治療室)で意識が戻らず、たくさんの機械と延命器具で命を何とか繋いでいた。



人工呼吸器を付けて、昏睡状態の航兄ちゃんを見ては、母さんや琴美姉ちゃんは泣きじゃくっている。



頭の片隅に追いやっていた不安がいつしか、僕を苦しめていた。



この空間にいることが耐えきれなくなった僕は、隠れるようにして薄暗い通路に座り込んだ。



『もう助からない』なんて告げられたら、僕は受け止めることなんかできないから。



とりあえず、気持ちの整理に時間がかかった。



遅れてやって来た父さんも事態の悪さを受け入れられず、呆然と立ち尽くしていたらしい。



後から亨兄ちゃんにそう聞いた。



燈也たちは何で大人たちが泣いているのか、不思議がっていたらしい。



これも亨兄ちゃんが言っていた。



自分の父親が危篤の状態に晒されているなんて、まだ幼い君たちになんて分からないよな。



それでも、何かいつもと違う異変に、1番上の燈也だけ分かっていたのかもしれない。



あまり元気がなかったから。
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