人生は虹色
処置室の扉を少しだけ開け、

夏実は中の様子を覗きこんだ。



そこには母親が黙々と患者の治療をする姿。



横たわるおばあちゃんに点滴の処置をして、「ありがとねぇ、おかげで少し楽になったよ」なんて言葉を貰っていた。



魔法みたいに人を元気にする母親を見て、夏実は演奏家ではなく、医療従事者の道に進もうと決心した。



あれだけ医療従事者なんてなりたくなかったのに、航兄ちゃんの死をきっかけに変わる。



『お兄さんは死んでいい人じゃなかった』って僕に泣きながら言ってきた日、決めてたんだと思う。



救えなかった命、今度は自分が救いたいって。
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