【シナリオ】華のJK、花屋のお兄さんにさらわれました!
episode.1

〇マンションの一室・ダンボール山積み

麗香:日向の両親が亡くなったあと、引き取ってくれた母方の叔母。


麗香「日向さん、アナタには結婚するっていう自覚が足りないわ!」

耳をキーンとさせるほど大きな声で言う麗香。
怒った雰囲気を隠そうともせず、日向に向かっている。

日向「自覚って、私17だよ?恋も青春もまだまだこれから……」
遮るように麗香のセリフ
麗香「政略結婚なんだから当たり前じゃない。いい?相手は私の会社と仲のいい社長の息子。失敗は許されないわ」

ペラペラと、日向に喋る余地すら与えないとでもいうように言葉を連ねる麗香。
日向は何か言い返そうと口を開くも、結局我慢したような表情に戻ってしまう。

麗香「日向さん、聞いてるの?」
日向「…少し散歩してくる!」※空元気な様子
麗香「あ、ちょっと日向さん!?」
日向「ごめんなさい!すぐ戻るから!」

麗香の静止を無視して家を出た日向。
パタン、と静かに閉まるドアの絵。



〇昼過ぎ・店が並ぶ道

はぁ、とため息をつく日向。
足取りは重い。

日向「勝手に出てきちゃった。帰ったらまた怒られるな〜」
(そんなことしょっちゅうなんだけどね)

そんなことを言うも、笑っていて結構気にしてない様子。
すると、日向はオシャレな花屋を見つけて近寄った。
しゃがんで、目に止まった黄色くて小ぶりの花をじっと見る。
※花壇についてる札に『キンシバイ』と書いてある。

日向「いいねぇ、キミたちはこんな綺麗なお店でのびのび育てられて」

ぼそりと呟かれる日向の本音。
その表情は柔らかくて、純粋に花を見つめてる。

慎「あ」

そんな彼女に気づかなかった慎がホースをこちらに向けていた。

日向「え?」

びしゃあぁぁっと思いっきり頭から水を被る日向。
ぽつぽつと水が滴る日向とホースを持ったままの慎が引きで映る。気まずい雰囲気。



〇花屋レジカウンターの前・椅子に座る日向

慎からもらったタオルを頭から掛け、俯いてどんよりした様子な日向。

日向「あぁもう、人生さんざんすぎる……」

日向の呟きを気にした慎が、動かしていた手を止め、カウンターに腰を預けて腕を組む。

慎「まだ高校生じゃねえか」
日向「そうなんです!まだ華のJKなんです!!うぅ〜〜、」手で顔を覆う。※わざとっぽく
慎「あーあー、泣くな」

ぽん、とタオルの上に手を乗せ、ガシガシと揺らす。
それにぴたっと動きを止める日向に、慎は気づいてない。

慎「で?そんな華のJKになんの悩みがあるんだよ」

めんどくさそうな素振りをしつつ聞いてくれる慎。
そんな彼に、日向は叔母に政略結婚させられることを言う。

日向「あーあ、まだ18歳にもなってないのに…」

無理やり笑顔を作る日向と、何も言わず沈黙する慎。
そんな無言を破って、日向がすくっと立ち上がった。

日向「でも、お兄さんに聞いてもらってすっきりした!」

頭に乗せていたタオルをありがとうと言って慎に押し付け、慌てて花屋から出る日向。
※タオルを持っている姿が、花屋全体から映される。



〇結婚式当日・控え室のような場所

真っ白なウエディングドレスを身にまとった日向が、沈んだ表情で椅子に座っている。
その部屋では、麗香と来賓した人たちが話していた。

来賓A「17で嫁ぎ先が決まってるなんて、大変ねぇ」
来賓B「大事な娘さんなのでしょう?」

心配するような言葉を投げる女の人も、日向を見ながらクスクスと嫌味ったらしく笑う。

麗香「そうね。養子にした時はどうしようかと思ったけど、役にはたつんじゃないかしら」

日向(それを私の前で言うかね……)

この程度の嫌味は日常茶飯事と言ってもいいほど言われてるから、日向は苦笑いで聞き流す。

麗香「よかったわ、"忌まわしい姉"の荷物がいなくなるんだもの」

麗香の言葉を聞いた日向は、怒りでガタンとイスを倒して立ち上がる。
麗香たちは「どうしたの日向さん」と笑みを浮かべて言う。

日向「私、結婚しない」

日向が呟いた言葉に、麗香はきょとんとした。

日向「ママを侮辱するような人のために、結婚なんてしない」
麗香「あっ、あなた、今更何を言ってるの!!?」

当然のように怒りに満ちた顔をする麗香は日向に手を伸ばそうとするも、パチンッと弾かれる。

日向「触らないで」
麗香「っ!!」

頬を叩こうと手を振り上げる麗香。

その時、「失礼します」と扉が叩かれ、部屋のドアが開かれる。
みんながパッと向いた方には、花束を抱えた慎が立っていた。

慎「は__」
日向「え、花屋のお兄さん……?」

戸惑った表情を見せる日向と怒ってる麗香を見比べた慎は、「あーー、」と何かを察したように目を泳がせる。
これが「叔母に政略結婚させられる」か、と心の中で思った。

慎を見て気をゆるめたのか少し目をうるませた日向。
それに慎は面倒くさそうにため息をついて、日向の方向に手を伸ばす。

慎「…………さらってやろうか?」

慎の言葉にびっくりするも、満面の笑みを作る日向。

日向「っうん!!」

ウエディングドレスの裾を掴んで走り出した日向は慎の手を取り、一緒に駆け出す。

反応できなかった麗香は、閉まったドアの向こうから日向の名前を呼ぶことしかできなかった。



〇フラワーカー

車まで走ってきたため息切れしてる2人。
とりあえず乗れ、と慎はドレスを汚さないようにパーカーを羽織らせて日向を車内に入れ、車を発進させる。

これからどうしたもんか、という顔をする慎に対して、日向は突然笑いだした。

慎「壊れたか?華のJK」※ちらりと日向を見ながら
日向「ふふ、いや、初めてちゃんと叔母に反抗したなぁって」
慎「随分遅めの反抗期だな」
日向「そうなの。今反抗期なんだ〜!」

日向(だから家出くらいしてもいいよね!)

それにしても、と日向が話し出す。

日向「ごめんねお兄さん、仕事中だったんでしょ?」
慎「まぁな。しょうがねぇから、華のJKの青春を守ったってことでチャラにしてやるよ」

赤信号で止まった車で、慎が日向を向いてニヤリと笑う。
日向はぱちくりと瞬いた。

「行く宛ては?」
「ないっ!」
「…責任取るしかねぇか」

諦めたように言う慎に、へへっと日向が笑いをもらす。

日向モノローグ「華のJKこと空澄日向、この度花屋のお兄さんにさらわれました!!」


< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop