【シナリオ】華のJK、花屋のお兄さんにさらわれました!
episode.2

○花屋の前

日向「あれ、花屋だ」
槙「俺んちはこの上」

へぇ〜と日向が見上げていると、こっち来いと槙に手招きされ、中に進んでいく。
花屋の奥には階段があり、登っていくとドアが現れた。表札には、橘の文字。

日向「たちばなさん?」
槙「そ。橘槙」

たちばなしん…とオウム返しのように呟く日向。

日向(そーいえば、お兄さんの名前知らなかったな)

そんなことを槙も思ったのか、槙はおまえは?と尋ねる。

日向「日向です、空澄日向。ひゅうがって読むやつ」
槙「へぇ、いい名前じゃん」

お世辞か?と疑うように目を細める日向。
でも槙は正反対にふわりと笑うように目を細めて、「花は、日向じゃないと咲かないんだぜ」と言った。
そんな彼に目を奪われていると__。

バサバサッ

何かが落ちた音。
ドアを開けた先にあったのは、積み上がったダンボールとそこから溢れた本や服、布だった。
それを目の当たりにした日向はぽかん、と口を開けて唖然とする。

日向「…」
槙「その目ヤメロ」

なんとも言えない表情で槙を見やる日向を、槙はわしっと頭を掴む。

中に入ると、槙は日向を玄関に残して部屋に入っていった。

槙「入って右の部屋な」
日向「はーい」

よっ、とドレスを地面につかないように掴んで持ち、ステップするように歩く。
覗いてみると、意外なことに部屋はがらんとした畳の部屋だった。

日向(あれ、汚くない。なんの部屋なんだ…?)

と日向が首を傾げていると、開きっぱなしの扉から槙が顔を覗かせた。

槙「おまえ、とりあえず脱げ」
日向「きゃーセクハラっ!」
槙「ちがうわバカ」

槙からぽいっと投げられたものをキャッチした日向。
それ着替えていいから、と言われ服と槙を交互に見て、槙さんありがとう!と笑う。


日向「…し、慎さん」

数分した頃、日向が部屋の外で待っていた慎を呼んだ。
扉近くの壁に背を預けていた慎は、どうした?と尋ねる。

日向「あの、ファスナーを下げてもらっても…」
慎「あぁ……」

そういえばウエディングドレスだもんなと納得する慎。
入っていいかと確認してから部屋に踏み入る。

ジーーー、とファスナーをおろす音。

日向はドクドクと脈が速くなるのを感じた気がして、無意識に息をひそめた。
対して慎は、(こいつ、会ったばっかりの男に無防備すぎだろ)と何とも言えない気持ちになる。

慎「ん」
日向「ありがと慎さん!」

ほんのり肌が赤く染まった日向を、後ろから見る慎。
何か見ちゃいけないものを見たような気がして、「早く着替えろよ」と言って慎はさっさと部屋を出た。



〇リビング・物が多い

部屋を出た日向がひょっこり顔を覗かせると、慎はリビングで何やら花の整理をしていた。
ぱちん、ぱちんと花の茎の下部分を切っている。

日向「お仕事中?」
慎「んー、いや、どっちかっていうと趣味」

趣味?と聞き返す日向に向き直る慎。

慎「生け花」
日向「えっ、なんか意外」
慎「ははっ、よく言われる」

そんな慎は、笑っているのにどこか悲しげな表情をする。

だって、と日向が声をあげた。
日向「慎さんはそんな固い雰囲気よりも、花屋さんにいるほうが似合う気がするから」

にこっと笑ってそう言う日向に、慎は面食らったような顔をした。
日向はハッとして、突然慌て始める。

日向「あっ別に生け花を貶してるとかじゃなくて、そーいうイメージがあるっていう話で!」

ぶんぶん両手を振り回して弁解をしている日向を見て、ふっと微笑む慎。

慎「俺もそう思う」
日向「え、やっぱバカにしてた?」
慎「…ちげぇよ」

なんでそうなるんだ、と疑うように細めた目で日向を見る慎。

日向「もしかして、ここにある荷物は趣味の?」
慎「まぁ…」

気まずそうにそっぽを向いた慎。
それに日向は、ふふんっと得意げな表情をした。

日向「任せてよ慎さん!私にかかればあっという間に綺麗にしちゃうからさ!」
慎「来て早々母さんみたいなことやらせちまってんな」
日向「それを言うならお嫁さんにしてよ!」

慎さんみたいな子生んだ覚えはありませーん、と落ちている新聞紙や本を集める日向。
それに、おまえみたいな嫁をもらった覚えもねーけどな、と心の中で慎がつぶやいた。

慎「じゃあ、嫁のバイトするか?」
日向「へっ?」

バサバサバサッと本と新聞紙の落ちる紙の重い音。
それに、爆弾発言をさらっと落とした慎は「あ、また散らかった」と軽く言う。

日向「よ、嫁!?」
慎「自分で言ったんじゃねえか」
日向「そ、それはそうだけど、いやそうじゃなくて!」

だって嫁ってつまり結婚ってことで、えでもそれはバイトで…!?
ぐるぐるとそんなことを頭で巡らせている日向。

日向「だって慎さん、彼女とかいないの?」
慎「いたらJKを家に連れてくるわけねえだろうが」

なんか言葉にしたら犯罪臭いな…とつぶやく慎に、それはそうと日向が言う。
慎は、いまだにつっ立ったままの日向に近づく。

慎「ま、責任取るって言った以上、おまえの好きにすりゃいいよ」

片手はポケットに突っ込んだまま、そう言って優しく頭を撫でた。
片付けるかぁとしゃがみこんだ慎。
日向は慌てて正座をした。

日向「えっと、慎さん!」
慎「んー?」
日向「不束者ですが、よろしくお願いします!!」

丁寧に頭を下げた日向に目をぱちくりとさせ、よろしく、と笑みを浮かべた。

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