【シナリオ】華のJK、花屋のお兄さんにさらわれました!
episode.5
〇花屋・お昼時

日向「だから椿さん!今度は私が、あなたをさらってもいいですか?」

きらきらとした日差しに似た笑顔で日向が言う。
慎は、「聞くもんじゃねぇだろ」ツッコみを入れる。

ずっと微笑んでいて弧を描いていた瞳が、大きく見開かれた。
その太陽みたいな光を浴びて、お願いするわと微笑む。

日向「まあ、といって行くあてはないんですけどね…」
慎「ほんとにな」
日向「いてっ」

こつんと軽く慎に小突かれる日向。

日向「まあいいじゃん!ね、慎さん!」
慎「……今回だけだからな」
日向「やった!」

まるでそれは、拾ってきた犬を飼いたいとねだる子供を、仕方なく許す親のような光景だった。
そんな日向に、他人事なのにこんなに気遣ってくれるのと驚く椿。
そんな彼女に甘い慎にも驚いた。

椿「慎、彼女には甘いのね」
慎「彼女じゃねえから」
椿「甘いのは否定しないの?」

揚げ足を取られて悔しそうにする慎。でも実際心を許してる節はあるため何も言わなかった。

椿「そうだ日向さん、ついてきてほしいところがあるの」


お店は慎に任せて、と日向を外に連れ出した椿。
大きなショッピングモールに行き、ぽんぽんと紙袋を増やしていく。
服やアクセサリーを買って(日向には信じられない値段だったけど)、アフタヌーンティーをして。
女の子みたいに楽しそうに笑う椿を見て、日向も嬉しそうに笑った。


〇花屋・空が夕日の色に染まる頃

椿は作業場に椅子を持ってきて座っていて、店内には日向と慎だけ。

慎「わりぃ、あの人のわがままに付き合わせて」
日向「ううん。楽しかったし、私は責任取っただけだもん」
慎「ふ、そーかよ」

なんなら私がお礼を言いたいくらい。椿さん、あれもこれもって私にくれようとするから…。と日向が心の中でつぶやいた。

少し沈黙が続いたとき、日向が話し出した。

日向「私、小さいときに一回だけ家出したことがあって。親に嫌い!って言って飛び出してきちゃったの。って言っても、行ったのは近くの公園だけど」
慎「随分かわいい家出だな」

へへ、でしょ、と柔く微笑む日向。

日向「でも両親は大慌てしてさ。夕方には見つかって、みんなで大泣きしたんだぁ」

だから椿さんも、大丈夫だよね。とちょっと不安げに、俯きながら言う。
慎はそんな彼女のほっぺをむに、と引っ張った。

日向「ふぇ、なにふんの」
慎「言ってんだろ?いつものことだって。心配いらねえよ」

優しい表情をする慎。
すると店内に人影が見え、いらっしゃいませ、と日向はそちらを向く。

菫人:慎の父親。圧を感じさせる風貌をしているが、家族(特に椿)に弱い

慎「おせえよ、親父」
菫人「……ああ」

菫人は、大事そうに花束を抱えていた。
それに気づいた日向が、あれ…と声をもらす。

椿「なんです、今更こんなところまで」
声をさえぎるように。
菫人「…すまなかった、椿」

カッとなってものを言いすぎた。反省している。と言う菫人に少し驚く椿。
そして、菫人が持っていた花束を受け取った。

椿「ふふ、珍しいわね、あなたが花束なんて」

そんな会話の後ろで、「あ、あれは知ってる!」と日向が声をあげた。

日向「マリーゴールド。…"変わらぬ愛"、でしょ?」

にこりと笑ってそう言う日向に、慎は「正解」と彼女の頭を撫でた。



〇店の外・日も落ちかけた頃

日向は店中で花のお世話中、菫人は近くに止めた車の中で待機。
店の外には、慎と椿だけ。

椿「お邪魔したわね」
慎「ほんとにな」

呆れたような慎と、ニコニコと微笑みを崩さない椿。
椿はふと、日向に目線をやる。
日向は花を片手にぶんぶん手を振っていた。

椿「でも本当、持ってかえっちゃいたいくらいいい子よ」
慎「母さんでも、それはダメ」
椿「ふふ、惚気られても困るし、やめときます」

珍しく拗ねた様子の慎に、優しく笑った。

車に乗り込んだ椿と奥にいる菫人を見ながら、「次は一緒に来いよ」と慎が言う。
2人は顔を見合わせて顔をほころばせ、そうね、ああ、と頷いて帰っていった。

慣れないことしたな…と頭をかきながら花屋に戻る慎の後ろ姿。

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