愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ものの価値は大きさじゃありません。ここは旦那様のお屋敷ですから、それだけでわたくしにとっては最上の価値がございますもの」

「いや、俺の屋敷といっても、この数年間ほとんど足を運ばなかったのだが……」


 もしも五年前にロザリンデと結婚をしていれば、こうはならなかっただろう。さっさと寮を出て、彼女と数人の使用人とともにここで暮らしていただろうから。


「そうかもしれません。だけど、これからは毎日ここに帰っていらっしゃるでしょう? それだけでわたくしが気に入るには十分の理由なのです!」


 クラルテはまたもやそんなことを力説している。頑固という本人の評価はあながち間違っていないようだ。


(いや、頑固というか、思い込みが激しいというか……)


 一体どうして俺のことをそんなにも盲信できるのだろう? 一見とても素直なようで、けれどそれだけじゃない感じがする。本当に不思議な女性だ。


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