愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

27.と、わたくしの婚約者様申しておりますので

 月日が経つのは早いもので、夜会の日はあっというまにやって来ました。
 わたくしはこれまた気合を入れまくり、今日という日に備えました。

 だってだって、夜会ですよ! 貴族の社交場ですよ! 今夜を堺に、わたくしはたくさんの貴族たちに『ハルト様の婚約者』だって認識してもらえるわけです。
 噂好きな奥様方は、こぞってわたくしたちの婚約話をしてくださることでしょうし、今夜出席していないご婦人方にも、あっという間に噂が広がります。つまり、今後わたくしのハルト様を狙う女性は排除できるって寸法です! 既成事実って大事ですよね!


「クラルテ、準備は――」


 部屋にお迎えに来てくださったハルト様が、わたくしを見て言葉を失いました。これです! この反応を待ってました! 狙い通りの反応に、正直ニマニマが止まりません。


「どうですか? 似合ってます?」


 むしろ似合っていると言ってほしい――そんなふうに圧を送っていると、ハルト様は真っ赤に頬を染めながら、わたくしのことを抱きしめました。


< 170 / 266 >

この作品をシェア

pagetop