愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(本当に? こんな愛らしい子が俺の妻になろうとしているのだろうか? なにかの間違いじゃなかろうか? というかこれ、倫理的に大丈夫なのか?)


 いや、年齢的には十分結婚可能なはずなのだが――こうも愛くるしいと、色々と罪悪感が湧いてしまう。無骨な俺と正反対のタイプだ。


(いや、そもそも俺はこの結婚に納得していない。第一、まだ寮の部屋を引き払ったばかりで、この家には使用人も誰もいない……空っぽの状態だ。それなのに、どうして……)


 疑問が次々と浮かび上がってくる。
 そんな俺をよそに、クラルテはポンと手を叩いた。 


「これから一緒に暮らすのですし、簡単に自己紹介をさせてください! 私はブクディワ侯爵の娘、クラルテと申します。年齢は十八歳、土と木の魔法の使い手です。先日アカデミーを卒業しまして、晴れてハルト・ディクケプフィガー様――つまり旦那様の婚約者に内定した次第です! よろしくお願いいたします!」


 もう一度ペコリと大きく頭を下げ、クラルテがはにかむように笑う。俺は思わず言葉に詰まってしまった。


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