愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「大多数のお客様がそうです。もちろん、既存のお客様もいらっしゃいましたけどね。本当に、あの火事は我が商会に大いなる繁栄をもたらしてくれました。うちの商売敵でしたから」

「知ってます。……だからこそ、あの商会を選んだのでしょう?」

「え…………?」


 正直言って、これ以上この男と二人きりだなんて耐えられません。遠回しに探りを入れるのはやめて、ここからは直球勝負とまいりましょう。


「ぶっちゃけ話をいたしましょう。ここ最近の連続放火、犯人はあなた、ですよね?」

「…………そんな、まさか」


 ザマスコッチ子爵がこたえます。わたくしはふぅと息をつきました。


「変だと思ったのですよ。あなたとはじめてお会いしたタイミングではまだ、商会が放火にあった事実は伏せられていましたから」

「いえいえ、私が聞いたのはあくまで『噂』ですよ。事実とは申し上げていないはずです。それだけで連続放火魔だなんて、クラルテさんは面白いことを言うなぁ」


 お、思ったよりは頭が回るようです。まあ、簡単には認めてくれないですよね! わたくしは首を横に振りました。


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