愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「謝る? このあたしが? ……冗談じゃないわ。そんなの絶対に嫌よ。お断りだわ」

「でしたらそれで構いません。もう二度と、わたくしたちに関わらないでください」

「言われなくてもそうするわよ」


 ロザリンデはクラルテ、次いで俺を睨みつけてから悔しげに拳をギュッと握る。そうして踵を返してから数秒、もう一度こちらを振り返り、涙目で俺のことを見つめてきた。


「ねえハルト……あたしたち、本当にもう無理なの? その女がうるさいからなにも言えないだけで、あなただって本当は……」

「無理だよ」


 もう二度と、声も聞きたくないし顔も見たくない。……そんな俺の気持ちを読み取ったのだろう。ロザリンデは地団駄を踏みながら「もういい!」と駆け出したのだった。
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