愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

5.思い込んだら一直線

(朝か……)


 まぶたが重い。爽やかとは言い難い朝だ。
 理由は明白。
 なぜか――クラルテがこの家にやって来たせいだ。

 明るくて、可愛くて――それからあざとい。ほんの数時間の間にすっかり彼女に振り回されてしまった俺は、ベッドに入って以降もなかなか寝付くことができなかった。


(いや、あれは強烈だろう?)


 クラルテには俺の隣の部屋を与えた。この屋敷で二番目にいい部屋と考えれば自然な流れだった。

 とはいえ、魔術師団に入隊してからずっと、男だけしかいない寮の部屋で生活していたのだ。隣の部屋に異性が寝ていると思うと、どうにもこうにも寝付けない。

 おまけに彼女は、寝る前にわざわざ俺の部屋を訪れ「おやすみなさい」と挨拶に来たのだ。あれが一番いけなかった。

 ……いや、寝間着は露出の殆どない愛らしく清楚なものだった。だが、それがかえって背徳感を増すというか、心臓に悪い。


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