愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
 問われて、これまでの自分を振り返る。一理ある……というか、プレヤさんの言うとおりだ。

 いち隊員としてなら、上官の命令に従うことができればそれでいい。
 けれど、これから俺は他人に指示を出す立場になる。上官が間違えれば部下は簡単に死ぬ。魔術や体術の腕だけでは人を救うことはできない。


「というか、俺ひとりだけでこんな感じじゃ、前言撤回待ったなしだと思うなぁ……」

「……それ、どういう意味です?」

「すぐにわかるよ」


 なんとも意味深なプレヤさんの言葉に、俺は思わずムッとしてしまう。

 だけど、彼の意図したことはすぐに俺にもわかった。なぜか――新年度を迎えた俺の職場に、クラルテが新採職員として現れたからだ。
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