恋は秘密のその先に
第十四章 正式な秘書に
「はあーー?!泊まらずに帰って来た?!」

翌朝、これからホテルに迎えに行くと電話をしてきた住谷に、文哉は夕べのうちにタクシーで帰宅したことを告げる。

「それって、真里亜ちゃんもってことか?」
「当たり前だ。彼女のマンションまで送って行った」
「それで?何かしたのか?」
「する訳ないだろう」

しそうになったが、なんとか己を止められた自分を褒めて欲しい。

だが予想外に住谷は、バカ!と叫んできた。

「お前なあ…。いくら奥手でもこれだけセッティングしてやったらいけるだろうと思って、俺がアレコレしてやったのに。それでも何もしないとか、お前は本当に大人の男なのか?あー、情けない。ここぞという時に決められないヤツが自分のボスだなんて。大丈夫か?この会社は」
「な、何だよ?!何の話だよ。決めるってどういうことだ?仕事に関係ないだろ?」
「あー、こんなピヨピヨのひよこちゃんとは、もうまともに話が出来ない。ホテルの宿泊代とルームサービス代、俺に請求来るようにしておいたけど、やっぱりお前に回す。それから、しばらく副社長室にはいかない。秘書なしで頑張ってくれ。じゃあな」

プツリと切れた通話に、文哉は呆然とする。

「な、な、何なんだよー!!」

そして言葉通り、住谷は月曜日になっても副社長室に姿を現さなかった。
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