恋は秘密のその先に
第十五章 ニューヨークへ
「着いた!ニューヨーク!!」

無事にジョン・F・ケネディ空港に着き、外に出ると真里亜は両手を上げて空気を胸いっぱいに吸い込む。

「ケホッ。なんだか空気が美味しくないですね」
「当たり前だ。大都会だぞ?」

それでも真里亜はテンション高めだった。

キュリアスが用意してくれた飛行機のチケットは、なんとファーストクラスだったのだ。

ゆったりと優雅な雰囲気の空間に、本当にここは飛行機の中?と真里亜はキョロキョロ落ち着かなかったが、フルフラットで横になるとぐっすり眠れ、存分に空の旅を満喫してニューヨークに下り立った。

真冬のニューヨークは想像以上に寒く、クシュン!と真里亜はくしゃみをする。

白いロングコートにブーツ、手袋もはめていたが、暖かい建物から外に出たばかりで、身体が温度差についていけない。

すると上品なチェスターコート姿の文哉が、巻いていたカシミヤのマフラーを外して真里亜に差し出す。

「いえ、あの。大丈夫ですから」
「いいから巻いてろ。風邪でも引いたらどうする」

文哉は真里亜の首にマフラーを巻くと、首元をしっかり覆うように整えた。

「あ、ありがとうございます…」

真里亜は小さくなって礼を言う。

そうこうしていると、二人の前にリムジンが滑るように横付けされた。

「Hi ! もしかしてAMAGIコーポレーションの方?」

リムジンから、はつらつとした30代くらいの日本人女性が降りてきて、二人に声をかける。

「あ、はい!そうですが…」
「やっぱり!良かったわあ、すぐに見つけられて。私はキュリアス USAの日高 カレンです」
「初めまして、天城 文哉です」
「阿部 真里亜と申します。よろしくお願い致します」

真里亜が名乗ると、カレンは、え?!と目を見開く。

「アベ・マリアさん?ワオ!素敵な名前ねー」
「あ、すみません。ありがとうございます」

つい癖で謝ってしまう。

「あら、もっと自信持って!その名前はアメリカだと強みになるわよ。誰だって一度であなたのことを覚えてくれるわ。さ、寒いから早く乗って」
「はい、ありがとうございます」

促されて二人はリムジンに乗り込む。

「えーっと、まず彼は運転手のサムね。サム、フミヤとマリアよ」
「ハジメマシテ」

運転席から後ろを振り返り、大柄な男性がにこやかに日本語で笑いかけてくれた。

「お二人の滞在中は、私とサムがお世話をするわね。じゃあ早速ホテルに行きましょう」
「はい、よろしくお願いします」

動き出したリムジンの中で、カレンは早速手にしたファイルから次々と書類を取り出す。
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