恋は秘密のその先に
第六章 コードネーム?
翌日、いつものように副社長室でパソコンに向かいながら、文哉はふと真里亜を見る。

紺のスーツを着て髪を後ろで束ね、真剣にパソコンのキーボードに指を走らせているその姿は、夕べのドレス姿の面影もない。

(まるで別人だな。いや、もとは美人なのかも?少し髪型を変えて明るい色の服を着れば…)

そこまで考えて、慌てて頭を振った。

(俺としたことが、まんまとスパイの策略にハマってるぞ)

気を引き締めて、もう一度そっと真里亜の様子をうかがう。

(情報を盗むような怪しい気配もないし、何が目的なんだ?それにどうやって俺の秘書になった?智史に聞いても全く答えにならないし)

秘書課の事なら知らない事などないはずなのに、なぜか真里亜については、
「どうだったかなあ。課長が配属したんじゃないかなあ」
と、のらりくらりとかわされるだけだった。

とにかく注意深く探るしかないか、と思っていると、真里亜が手を止めて、ふうと息をついた。

両手をグーにして肩の横に持ってくると、目をつぶりながら、うーん…と小さく伸びをする。

(なんだそれ、猫か?)

思わずじっと見つめていると、パチリと目を開けた真里亜と視線が合ってしまった。

(ヤバイ!)

慌てて文哉はパソコンに目を落とす。

(落ち着け。いつもの俺を思い出せ)

やたらとせわしなくキーボードを叩きながら、文哉は必死で気持ちを落ち着かせていた。
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