恋は秘密のその先に
 副社長室で一人、キュリアスのQ&A書類を作っていた真里亜は、突然鳴り響いた警報ベルに驚いて手を止める。

「え、何?」

 辺りをキョロキョロ見回した時、部屋のドアが激しくノックされた。

「火事です。早く外へ!」
「火事?! 大変!」

 真里亜は急いでドアへと向かう。

 ドアレバーに手をかけて少し下に押した時、
「真里亜、開けるな!」
 という声がどこからともなく響いてきた。

 (え、今の声、副社長?)

 思わず上を見上げた時だった。

 ドン!という強い衝撃を身体に受け、真里亜は勢い良く床に倒れ込む。

「痛っ……」

 身体中にジンジンする痛みを感じながらなんとか顔を上げると、スーツを着た目つきの鋭い男が、副社長のデスクの上にあったノートパソコンを取り上げるのが見えた。

「何するのよ! 離しなさい!」

 真里亜は立ち上がると、男に飛びついてパソコンを奪い返そうとする。

「こいつ、邪魔だ!」

 男が真里亜を振り払おうとするが、真里亜は必死ですがりついていた。

「警備員だ! ここを開けろ!」

 ドアを外から叩く音がするが、真里亜はそれどころではない。

「くそっ! この女、離せ!」

 窮地に立たされた男が、渾身の力で真里亜を突き飛ばし、真里亜は後ろに倒れ込んだ拍子にデスクの縁に頭を打ちつけた。

 ガン!という音がして、真里亜の意識がふっと遠のく。

「真里亜!」

 部屋に飛び込んできた文哉の姿を見ながら、真里亜は意識を失った。
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