恋は秘密のその先に
「どう? 怪我の具合は」
「はい、もう大丈夫です」
「そっか、良かった。文哉も心配してたから伝えておくよ」
紅茶を飲む手を止めて、真里亜は住谷に顔をしかめてみせる。
「副社長が私を心配ー? そんな訳ないですよ」
「どうして?」
「だって、さっきまでずっと私をチャットで脅してましたもん」
は?と住谷はうわずった声で驚く。
「脅す? って、何を?」
「キュリアスのファイルを共有フォルダに戻せって」
「ああー、なるほど。それでか」
合点がいったとばかりに、住谷は何度も頷く。
「だからあんなに、ダダダダーッてキーボード叩きまくってたのか。俺、マシンガンでもぶっ放してるのかと思ったよ」
「マシンガンって、あはは!」
「笑い事じゃないよー、真里亜ちゃん。部屋にあいつと二人きりでいる俺の身にもなってよ」
「いいじゃないですか? お邪魔虫もいなくなって」
「ん? 何? お邪魔虫って」
「またまたー。それに私だったら副社長と二人きりなんて地獄ですけど、住谷さんにとっては天国ですよね? あー、羨ましい。愛する人と二人きりで仕事なんて」
ガタガタッと派手な音を立てて、住谷は椅子から落ちそうになるほど仰け反った。
「ま、ま、真里亜ちゃん。何を言って……」
「今更隠さなくても大丈夫ですよ。私、誰にも言ってませんから。こう見えて口は堅いんです。それになんだかんだ言って、副社長と住谷さんのことは応援したいんですよね」
「お、応援なんて、やめてくれ」
住谷は仰け反ったまま、ブルブルと首を横に振る。
「どうしてですか? 私、副社長のこと鬼軍曹なんて思ってましたけど、住谷さんとラブラブな雰囲気なのを見てちょっと安心したんですよね。あー、鬼軍曹もやっぱり人間なんだなって。住谷さんも以前、副社長の幸せを願ってるって話してくれて、ジーンとしました。あの時住谷さんは、自分のエゴだ、なんて言ってましたけど、私から見るとお二人は相思相愛ですよ。いいなー、私もあんなふうに誰かに愛されたいな」
頬杖をついてうっとりする真里亜に、住谷は必死で気持ちを落ち着かせてから口を開く。
「ま、真里亜ちゃん。念の為に聞かせて。もしかして、いや、万が一にも、俺と文哉が、その……恋人同士だなんて思ってたり、しないよね?」
「ん? 思ってますよ」
「ヒーーー! 嘘でしょ?! やめてくれ、想像だけでもやめてくれ!」
「想像も何も、実際にそうでしょ? そりゃ、お二人は男同士だけど、愛の形なんて人それぞれだし。お二人の愛は本物だと私も感じますよ。だから、ね! 自信持ってください」
ポンと肩に手を置かれ、住谷は顔を引きつらせて固まる。
何がどうなって真里亜はそんなことを思うようになったのか、どこをどうしたら自分と文哉が恋人同士に見えるのか、もはや完全に理解不能だった。
「はい、もう大丈夫です」
「そっか、良かった。文哉も心配してたから伝えておくよ」
紅茶を飲む手を止めて、真里亜は住谷に顔をしかめてみせる。
「副社長が私を心配ー? そんな訳ないですよ」
「どうして?」
「だって、さっきまでずっと私をチャットで脅してましたもん」
は?と住谷はうわずった声で驚く。
「脅す? って、何を?」
「キュリアスのファイルを共有フォルダに戻せって」
「ああー、なるほど。それでか」
合点がいったとばかりに、住谷は何度も頷く。
「だからあんなに、ダダダダーッてキーボード叩きまくってたのか。俺、マシンガンでもぶっ放してるのかと思ったよ」
「マシンガンって、あはは!」
「笑い事じゃないよー、真里亜ちゃん。部屋にあいつと二人きりでいる俺の身にもなってよ」
「いいじゃないですか? お邪魔虫もいなくなって」
「ん? 何? お邪魔虫って」
「またまたー。それに私だったら副社長と二人きりなんて地獄ですけど、住谷さんにとっては天国ですよね? あー、羨ましい。愛する人と二人きりで仕事なんて」
ガタガタッと派手な音を立てて、住谷は椅子から落ちそうになるほど仰け反った。
「ま、ま、真里亜ちゃん。何を言って……」
「今更隠さなくても大丈夫ですよ。私、誰にも言ってませんから。こう見えて口は堅いんです。それになんだかんだ言って、副社長と住谷さんのことは応援したいんですよね」
「お、応援なんて、やめてくれ」
住谷は仰け反ったまま、ブルブルと首を横に振る。
「どうしてですか? 私、副社長のこと鬼軍曹なんて思ってましたけど、住谷さんとラブラブな雰囲気なのを見てちょっと安心したんですよね。あー、鬼軍曹もやっぱり人間なんだなって。住谷さんも以前、副社長の幸せを願ってるって話してくれて、ジーンとしました。あの時住谷さんは、自分のエゴだ、なんて言ってましたけど、私から見るとお二人は相思相愛ですよ。いいなー、私もあんなふうに誰かに愛されたいな」
頬杖をついてうっとりする真里亜に、住谷は必死で気持ちを落ち着かせてから口を開く。
「ま、真里亜ちゃん。念の為に聞かせて。もしかして、いや、万が一にも、俺と文哉が、その……恋人同士だなんて思ってたり、しないよね?」
「ん? 思ってますよ」
「ヒーーー! 嘘でしょ?! やめてくれ、想像だけでもやめてくれ!」
「想像も何も、実際にそうでしょ? そりゃ、お二人は男同士だけど、愛の形なんて人それぞれだし。お二人の愛は本物だと私も感じますよ。だから、ね! 自信持ってください」
ポンと肩に手を置かれ、住谷は顔を引きつらせて固まる。
何がどうなって真里亜はそんなことを思うようになったのか、どこをどうしたら自分と文哉が恋人同士に見えるのか、もはや完全に理解不能だった。