無能弁護士
次の日私は大学の図書館に行った。

空いている席に座ろうとすると、目の前に誰かが立ち塞がった。

元彼だ。

「昨日はめんどくせえ奴が来たから帰ったけど、話はまだ終わってねえぞ」

私はさすがにやばいと思い一心不乱に逃げた。足の速さには自信がある。

「おい、お前、俺に足の速さで勝てると思ってんのか!?女の分際で!!俺なんて小学生の時ずっとブロックリレーの選手だったんだぞ!」

追いつかれる!と覚悟を決めた時私は何かにぶつかった。

「うわぁぁぁぁぁ」

ぶつかった相手は、さすがに大袈裟だろと言いたくなるほどのリアクションをしてきた。

私はぶつかった相手の顔を見てギョッとした。

「べ、弁護士バッジ自慢男!!」

「え?、、、あ、あなたは昨日の!!元彼に追いかけられ不幸女!!」

これは運命なのかもしれないと、こんな時なのに私の胸はトゥンクした。

「またお前かよ!」

元彼が叫んだことで私はハッとして、弁護士の腕を掴んでまた走り出した。

「えっ?えええ?今から蕎麦を食べる予定だったんですけど、、、」

色白で細身の弁護士男は今まで生きてきて運動をしたことがないのか、10mも走るとゼェゼェと疲れたような息をし始めた。

「え、体力無さすぎません?」

思わず彼が心配になり、女子トイレに逃げ込んだ。
これ以上走らせると、血を吐き出し始めるかもしれない。

「や、やめてください!せっかく弁護士になったのに違う形で法廷に立たなきゃ行けなくなる!離してくださいーー!!」

「あっすみません。つい無意識で、、、」

そんなことをしていると元彼がやってきた。

彼もまた(自分が追いかけて来てるくせに)気が動転しているのか、女子トイレに飛び込んできた。とてもカオスだ。

「き、キャー!女子トイレに男が!」

私はそう叫んでまた弁護士バッジ自慢男を引きずっていった。

「僕は関係ないのにー!!!」

悲鳴を上げる弁護士男を、それでも私は離さないまま走り続けた。
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