大学生をレンタルしてみた
オープンキャンパスは学生生活課の職員総動員で土日の二日間行なわれた。

学生にとってメインは模擬講義なので対応が大変なわけではないけど、それでも私の奨学金相談コーナーにはポツリポツリと途切れることなく人が訪れた。それは保護者だけだったり、親子だったりした。

奨学金相談コーナーには3人の職員が配置され、一人一人ついたてに仕切られたブースに着く。

留学制度や学生寮よりもお金に直結するテーマだからか、心なしか来る人来る人表情がこわばっているような気がする。

一組の親子が私のブースにやってきた。お母さんは髪が胸下までのロングでゆるく巻き、大学生の親にしてはすごく若々しい人だった。まつエクもしてるようで一目でグッと惹きつけられる。一方で息子の方はひょろっとしてて大人しくて服装もブカブカに感じるほど子どものような雰囲気をまだ持っていた。

「すみません、奨学金をお借りすることができるかどうかお伺いしたくて」

お母さんの方が口を開いた。
話を聞くと、世帯年収が1,500万円あり一人っ子だができれば奨学金を借りたいという話だ。

今の一般的な制度上、所得制限に引っかかり奨学金制度を利用することはできない旨を最初に伝える。こういう時は感情を含めずに淡々と伝えるようにしている。

一方で学内の私設奨学金の制度もあることを伝え、こちらは学生生活を応援する位置付けなので所得制限などは関係なく、返還不要の給付型であることをアピール。しかし優秀な成績を収めていることが必須、毎年の見直しもある。

お母さんの表情がどんどん曇っていくのは分かっていた。

< 37 / 56 >

この作品をシェア

pagetop