大学生をレンタルしてみた
飯塚晴人はパッタリと体育館を借りなくなった。たったそれだけで私と彼との接点はなくなった。出会う前に戻ったようだ。そうだ、こんな生活を私は送ってたんだ。

賑やかな学食の隅でうどんをすする。いつもと変わらないだしの味。温かいうどん、だし汁を十分に吸った油揚げが体に染み渡る。美味しい、毎日同じでも、安くても、美味しいものは私を幸せにする。

うどんがあれば私は幸せだ。

私は学食の隅でも窓の外に顔を向けて座るようにしていた。

時々感じてしまう彼の気配を断ち切るためだった。その気配は常に友達と一緒で、その中には女の子も当然のようにいた。それが彼本来の姿だったのだ。

女の声で「晴人」と名前を呼ぶ声も聞いた。どんな顔をして声の方を向くのか、どんな表情で応えるのか、見たくない自分がいた。

私は職員だし、こんなことで消耗してる場合じゃない。年下の男に遊ばれてる場合じゃない。

ちゃんと相手を見つけなきゃ。
私たちの関係はなかったことになったんだ。

私はうどんを食べ終わると8号館へまっすぐと戻る。
冬が始まる。
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