大学生をレンタルしてみた
梅雨空が続く中、たまに雲の隙間から太陽が顔を見せる。その時だけ地面に光と影ができて、空気が明るくなる。

彼が一呼吸置いた。

「それでさ、その会社がね大阪なの」

彼は全国就活で飛び回っていたから、正直大阪だろうと驚かなかった。ちゃんと自分の足で行動していることを私は尊敬すらしていた。

だから悲しくはない。

「あ、結構行ってたもんね、そっか。離れちゃうね」

私は極力明るく言い、どう転んでも平気なような顔を見せた。

なぜか晴人の方が少し寂しそうな顔をした。
ワックスで整えた短髪が新人のサラリーマンらしさを感じさせる。

「頑張るんだよ」

私は続けて言った。

「椎果ちゃんも来ない?」

つるんとしたキレイな顔で彼は言う。すごくさらりとした口調で。

「ここ辞めて、俺と一緒に来ない?」

ほのかに笑みを浮かべる。

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