大学生をレンタルしてみた
梅雨空
キャンパス内、部室棟とグラウンドが向かい合うその並びに紫陽花が咲くところがある。赤に近い紫もあれば青に近い紫もあって、梅雨の時期はその一角だけ瑞々しいグラデーションを描く。
キャンパスの端の方だから知る人は少ないかもしれないけど、私が大好きな場所だ。
バスケ部が申請したボールが届いたから部室へ届けた帰り、紫陽花の前で足を止める。
「きれい」
一人呟いてゆっくりとしゃがみ、一つ一つのガクを眺める。
「きれいだね」
ふと背後で声がした。聞き慣れた声。
振り向くと髪を短く切り、着慣れないスーツに紺色のネクタイを合わせた晴人が立っていた。
「あれ、今日も面接だったの」
「午前中1個ね」
絶賛就活中の彼は、頻繁に高速バスであっちこっち移動しては選考を受けていた。
「どこ?」
「今日は不動産」
彼が私の隣に並ぶ。紫陽花の方を向けていた顔を私に向けた。
「さっき1個内定が出てさ」
確かな口調で言う。ここのところずっと彼が欲しがっていたものだ。
「おめでとう」
「ありがとう、それを言うためにここに来た。どこいるかなって」
「私?」
「うん、キャリア支援センターにはもう報告してきたよ」
「どこ受かったの」
「中小だよ、中小の商社なんだけどさ、面接に何回か行ったんだけどすごく会う人みんな雰囲気良くて、俺ここで働きたいなって思った。もう就活辞めようと思う」
「良かったじゃん」
キャンパスの端の方だから知る人は少ないかもしれないけど、私が大好きな場所だ。
バスケ部が申請したボールが届いたから部室へ届けた帰り、紫陽花の前で足を止める。
「きれい」
一人呟いてゆっくりとしゃがみ、一つ一つのガクを眺める。
「きれいだね」
ふと背後で声がした。聞き慣れた声。
振り向くと髪を短く切り、着慣れないスーツに紺色のネクタイを合わせた晴人が立っていた。
「あれ、今日も面接だったの」
「午前中1個ね」
絶賛就活中の彼は、頻繁に高速バスであっちこっち移動しては選考を受けていた。
「どこ?」
「今日は不動産」
彼が私の隣に並ぶ。紫陽花の方を向けていた顔を私に向けた。
「さっき1個内定が出てさ」
確かな口調で言う。ここのところずっと彼が欲しがっていたものだ。
「おめでとう」
「ありがとう、それを言うためにここに来た。どこいるかなって」
「私?」
「うん、キャリア支援センターにはもう報告してきたよ」
「どこ受かったの」
「中小だよ、中小の商社なんだけどさ、面接に何回か行ったんだけどすごく会う人みんな雰囲気良くて、俺ここで働きたいなって思った。もう就活辞めようと思う」
「良かったじゃん」