虹へ向かって飛ぼう
「ふ~ん」
「!」
仁王立ちするように、そこにカミラが立っていた。こんな早い時間にカミラが登校しているなんて。
「永山先生だっけ? すごい人気なのねぇ」
「……」
「そういえば、椿って園芸部だったよね? あの先生に近づくために入ったの? 今じゃあの騒ぎで近づけもしないようだけど」
「誰でも下心あって近づいたように言わないでよ。カミラみたいにね!」
「どういう意味よ!」
急に声を荒らげるカミラを無視し、私は教室へ向かった。
「椿!」
かなり腹がたったんだろうか、カミラは後ろでギャンギャン文句を言っている。
昔っからそうじゃない。暖と付き合っていた時も、家に暖を呼べばお茶を持っていけとお母さんに言われたからと部屋にやって来て、そのまま居座った。
家に暖がくるときはいつも3人になっていた。
いつからか暖も家にしょっちゅう来たがって、それがカミラに会いたいがためだったということは後に気付いた。
カミラはいつもそうだった。良い子のフリをして少しずつ、少しずつ私のテリトリーに入り込み、私の世界を侵し、大切なものを奪っていく。
その意図は、ただ私を苦しめたいだけ。