虹へ向かって飛ぼう

*その詞を聴くまでは


 家に居ても、バイトに来ていてもカミラの視線がそこにはあった。

 1時間以上もかけてバイト先の周辺にカミラが来る理由なんてないはずなのに、カミラは私を見張るように毎日バイト先に現れている。

 私に嫌がらせしたいだけだってわかってはいるけど、その魂胆にまんまと乗せられてしまったように、カミラが来るんじゃないかと思っただけで不安は増して、学校や親にもバレるんじゃないかと心配になって、あることないことネガティブな思考が増えていった。苦痛な日々————。




先生からもらったライブのチケットが入っていた封筒。その中にライブの詳細が書かれたフライヤーも入っていた。海を一望する高台にある湘南のライブハウス。

 ライブ当日、少し早めに会場に着くと、プライベートライブだからと言っていたわりに、外にはファンらしき若い女性もたくさんいて中に入るのに勇気がいった。こういう情報ってファンはどうやって入手するんだろう?と、到底、私には太刀打ちできないなって思った。

 中に入るとすでに人がいっぱいで、私みたいな学生が来るような所ではないんじゃないかと心配していたが、そこにはけっこうな年配の方や子連れの方もたくさんいて、ファミリー感たっぷりな雰囲気に、ためらっていた気持ちが少し和らいだ。
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