虹へ向かって飛ぼう

 ステージの準備が進められているのか、頭上には優しいストリングライトが輝き、木で出来たテーブルの一つ一つにやわらかいオレンジ色のキャンドルライトが揺れていた。

 店内から外へ飛び出すように作られたオープンエアデッキは、そのまま海につながっているんじゃないかと思うほど、青い海に伸びていた。時間的にちょうど夕日が美しく、やわらかい青やオレンジ、ピンク、黄色、まるで虹色のような空が180度広がっていた。その絶景と、暑さを忘れてしまうような海風の気持ちよさにそっと目を閉じる。

「おまたせしました」

 その声に顔を上げると、注文していたトロピカルティーが運ばれてきた。

 ステージからずっと離れたカウンターになったような席に座ると、ステージの前に並べられたテーブル席に集まる人々で少し見えづらくなってしまった気がする。でも、まあいっか。そんなふうに思いながら、目の前に広がる海へ視線を移す。この海と雰囲気が心地良すぎる。
 
 それでも100人以上はいるんだろうか。みんな余裕で座って聴けるくらいの席は用意されているみたいだけど、人の多さにちょっと緊張した。この緊張の意味は、きっとそれだけではないって自分でも気づいていた。

 夕焼け空が濃い青に染まるころ、ステージから先生の声が聴こえた。

 普通のコンサートやライブみたいな雰囲気とは違く、プライベートだからなのか、目の前に座る人に手を振る先生の姿。その笑顔は学校やYデッキで見るものとは違う。

 その違いになんとなく、心がチクッとする。

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